《TOFU magazine 旅する岐阜 13》/【御嵩町】みたけさいとう商店

TOFU magazine 13」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第13回は御嵩(みたけ)町を訪れました。

《旅する岐阜13 Mitake》

山小屋で働いた経験から
生まれた価値と豊かな暮らし

家族写真

青々とした柚子の爽やかな香りが鼻に抜け、追いかけるようにピリピリと青唐辛子の辛みが舌を刺激する。おお、辛い。でも、癖になる。「みたけさいとう商店」の御嶽柚子なんばん。いわゆる柚子胡椒だが、風味が格段に違う。鶏のハムに少し乗せて味わうと、止まらなくなった。水炊きや冷奴に、唐揚げや餃子に、マヨネーズと和えてディップに、オリーブオイルと合わせてドレッシングにと実に万能な調味料だ。

可児郡御嵩町でみたけさいとう商店を営む斉藤健さん、湯湯さんを訪ねた。

「僕の両親が御嵩町出身で、今は祖母が住んでいた家に両親と一緒に住んでるんです」。4月は山菜や野草を採り、5月は芋の植え付け、8月は青唐辛子、11月は柚子と芋の収穫と柚子なんばんの仕込み、12月から3月には干し芋を作る。

干しいも

そのほか、柚子なんばんを長期熟成させた醤油麹「柚子なんばんじゃない醤」や「てんさい糖の柚子茶」、「へちまたわし」、木のカトラリーなども作り、店舗は構えずにオンラインや委託、出店などで販売する。

商品
柚子なんばん540円、柚子なんばんじゃない醤1,300円(すべて税込)

「私、本名は優子っていうんですけど、昔から家族に〝ゆゆ〞って呼ばれてて、その名前の方が馴染み深くて」。そんな大阪生まれの湯湯さんと健さんが出会ったのは、2012年の夏、長野県にある八ヶ岳の山小屋だった。すでに3年間山小屋スタッフとして働いていた湯湯さんと、夏季スタッフとして働きに来た健さんは意気投合し、翌年に結婚。

「実は旦那さんが山小屋に来たときに、お父さんが作った柚子なんばんを持ってきてくれたんです。それがフレッシュで、めちゃくちゃ美味しくて」。今も柚子なんばんは父親のレシピを受け継いでいる。

ゆずなんばんとカトラリー
カトラリーはクリやクルミなどを使い、健さんが手づくりしている

「山小屋では電気もなく、水や食料も限られていて、本当にシビアな暮らしをシェアしていました」。ソーラーパネルの蓄電で夜を過ごし、貯めた雨水で炊事をする。限られた資源を大切に使う。その経験が、今も暮らしの根本にある。

「自然に囲まれた山小屋じゃない、駅から5分のまちの中にいてもやるべきこと、やれることはいっぱいあるって気づいたんです」と健さん。「フードロスを減らしたくて、柚子はうちや知人の庭で採れたものを使ってます。へちまたわしも、みんなが一つずつ市販のたわしの代わりに使えば、それだけでプラスチックの消費がすごく減るはず。そうやって一つ一つできることを考えて、今の消費ばかりの生活にブレーキをかけたくて」と湯湯さん。

畑を耕し、ものをつくり、二人の娘とのびのび笑い合う。それはとても平和で、豊かな暮らしだ。

みたけさいとう商店
可児郡御嵩町中2331-3
https://www.mitake-saito-shoten.com/
Instagram:@mitake.saito.shoten

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2021年04月07日作成
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