【高山市】やわい屋

飛騨春慶や一位一刀彫、真工藝さんの木版手染めぬいぐるみなど、昔から土地に根付いたものづくりが行われてきた飛騨高山にある民藝のお店「やわい屋」さんに伺いました。実は、さかだちブックスでやわい屋さんを取材するのは2017年以来2回目。今回はお店の改装でオープンした私設図書館や展示室、さらにオリジナルグッズなど、新たな見どころもご紹介します!

※2017年にご紹介したやさい屋さんの記事はこちら>>【高山】やわい屋

●暮らしの道具を扱う民藝の店

高山市の市街地から車を20分ほど走らせた山間にあるやわい屋さん。築150年の古民家を移築したという建物は、田園風景にすっと馴染み、ずっと前からそこにあったかのような佇まいです。

店内にはうつわや照明、アクセサリー、キッチンツールなど、暮らしの道具がぎっしりと並んでいます。 動物や妖怪が生き生きと描かれた小島鉄平さんのうつわ、齊藤十郎さんの陶器のペンダントライトといった定番のものや、垂井町で制作を行う染織作家・竹中明日香さんのノッティング(椅子敷)など、現在は計15〜16人の作家さんの手仕事から生まれたアイテムを取り扱っているそう。

1・2枚目/安土草多さんのペンダントライトとうつわ 3枚目/雪入道

安土草多さんのガラスのペンダントライトやうつわ、奥井木工舎さんが制作する郷土玩具「雪入道」、木村工芸所さんの木の匙など、飛騨高山で制作を行う作家さんの手仕事の品々も並びます。

これらのアイテムは、すべて店主の朝倉圭一さんがセレクトされています。

地元の高山市には家業を継いで自営業で生活をする仲間が多かったことがきっかけで、自分も商いの道に進んだという朝倉さん。「地域に根付いた文化や歴史があるこの飛騨の土地には、生活に密着した“民藝”のお店が一番合っているのではないか」と考え、2016年にやわい屋をオープンしました。

「この仕事は、うつわを売るだけではなく、思いや情報、経験も提供することだと思っています」。

全国各地の窯元や産地を巡り、自身が本当に良いと思う作家さんのものを買い付けているからこそ、お店でその手仕事を紹介する朝倉さんの言葉やSNSなどでの紹介文には、確かな説得力があります。

お客さんは地元の方だけでなく富山、愛知、長野からわざわざ足を運ぶ方も多く、自宅使いから贈りものまで、さまざまな用途で利用されています。

「お客さんが『実家を出る子どもが持っていっちゃったのよ』と言って、新しいお皿を買いに来てくれたことがありました。親から子へ、“いいものだから”とうつわが使われ続けていくことって、すごく幸せなことだと思います」と朝倉さん。確かに、お店からお客さんへ、お客さんからさらに次の人へと“いいもの”が伝わり、それが暮らしの中で大切に使われ続けるって、とても素敵なことですよね。

●コロナ禍にお店を改装し、私設図書館と展示室をオープン

お店のオープンからわずか4年目でコロナ禍を迎えたやわい屋さん。営業自粛などでできた時間を利用し、地元の建築事務所・ワタナベ建築さんと一緒に店内の改装を行いました。

2階の屋根裏には、約2,000冊もの蔵書があるという私設図書館が。もともとは古本屋として活用していたスペースでしたが、「本を買わなくても、何もしなくてもいい、開かれた場所にしたい」という理由から、2020年6月に私設図書館になりました。

静かにゆったりと時間が流れるこの空間では、本を読むのはもちろん、パソコン作業をしたり、外を眺めながらコーヒーを飲んだりと自由に時間を過ごすことができます。

1階の店内奥の部屋には展示室「4’33″」をオープン。作家さんの展覧会や行商が行われたりと、さまざまな企画・展示を行っているそうです。

訪れた日は、福島県昭和村で昔から営まれてきた「からむし」という繊維を使った手仕事にまつわる企画展が行われていました。

また、2023年にはオリジナルの包装紙(写真・右の額に飾ってあるもの)を制作。デザイナーの白澤 真生(しらさわ まさお)さん、クリエイティブディレクターの千原 誠さんと朝倉さんの3人で、ああでもない、こうでもないと言い合いながら2年をかけて完成させたのだそう。

力強い筆致で描かれた模様は、シンプルながら生命力や手の温もりが感じられます。希望すればオリジナル包装紙での無料ラッピングもしてもらえるので、自分へのプレゼントにも欲しくなります!

さらに、包装紙に採用されなかったデザインを手拭いやショップカードに展開されているので、気になる方はぜひそちらもゲットしてくださいね。

2016年のオープンから、今年で8年目となるやわい屋さん。

このお店のあり方について「まちのシステムの一部として、変わらずにそこにあり続けるお店でありたいです。15年後、地元を離れた若者が帰って来た時に『この店まだあるんだ』と気づいて、嬉しくなったり安心するような店になっているといいなと思います」と話してくれた朝倉さんの言葉が、とても印象に残りました。


やわい屋

住所:岐阜県高山市国府町宇津江1372-2

営業時間:13:00〜17:00

定休日:不定休(Instagramの営業カレンダーをご覧ください)

Instagram:@yawaiya_asakura

HP:https://yawaiya.amebaownd.com/

2023年07月13日作成
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