《TOFU magazine 旅する岐阜 35》/【可児市】Organic Punk Chinese 大豊軒

TOFU magazine 35」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第35回は可児市を訪れました。

《旅する岐阜35 Kani》

五感で味わう優しい料理
食べる歓びに心が満たされる場所

深く記憶に残る料理がある。それは口にした途端に歓声を上げるような派手な料理ではなく、皿の上の野菜や肉やパンを五感でじっくりと味わい、ともにテーブルを囲む友人との会話を愉しみながら、時折、顔を見合わせて「ああ、美味しいね」と微笑み合うような、そんな料理だった。

そして、月日が経ってもふとした時に、あのポトフのような煮込み料理や美しい担々麺を、懐かしく、くっきりと思い出すのだ。

可児市郊外にある「Organic Punk Chinese 大豊軒」。シェフの直井昭憲さんが作る料理がどうにも恋しくなり、再び訪れた。

店のルーツは約60年前に昭憲さんの祖父が中津川市で始めた中華料理店「大豊軒」に遡る。45年ほど前に父が店を可児市に移し、「大豊閣白雲」としてオープン。高校を中退後、三重県にある中華料理店で13年間にわたって修業をした昭憲さんも帰郷後、父とともに厨房に立った。

2006年、父の引退を機に店を継いだ昭憲さんは、原点回帰の意味を込めて店名を「大豊軒」に戻した。 そして修業中、昔ながらの簡素な調理法で素材の旨みを引き出す料理を作る中国・揚州出身の料理人たちと出会ったことをきっかけに、自らの食を見つめ直していた昭憲さんは、自身の店で化学調味料などの添加物を一切使わないと決めた。

だが、食材本来の味や香りを生かし、自家製発酵調味料を使って作った料理を出すと、それまで通ってくれていた客は殆どが「味が変わった」「物足りない」と離れていった。

厳しい状況が続く中、それでも昭憲さんはまっすぐ食と向き合った。無農薬野菜を栽培する農家や無投薬で豚を育てる養豚家、漁師や猟師らを訪ね、自然の循環の中でできた食材を仕入れた。麹や醤油、赤味噌など発酵調味料を手作りし、さらに中国人に日本の環境では作れないと言われた〝老麺(ろうめん)法〟のパンを作って、その種を繋ぎ続けた。

すると、ここでしか味わえないオーガニック料理を求め、次第に地元や遠方からも客が訪れるようになった。

献立は昭憲さんと食材との対話で決まる。「どうして欲しいか食材に聞くんです。少しでも美味しくなるようにって。それだけです」。隣で妻の順子さんが「シェフは四六時中、とにかくずっと料理のことばかり考えてますね」と笑う。

クリームチーズを挟んだ蕪の漬物を添えたサラダ、天使の海老と野菜あんかけ、あんしん豚とビーツや蓮根や原木椎茸の煮込み、20年種を繋いできた蒸しパン。思わず目を細め、小さく頷きながら味わうご馳走がまた、記憶にくっきりと刻まれていく。


料理は昼夜ともにお任せコースのみ。ランチは前菜5種、スープ、主菜、パンが付く「杏コース」(税込3,500円)と、杏コースに麺が付く「吃責コース」(税込4,100円)の2種類。


Organic Punk Chinese 大豊軒
可児市広見2246-18
11:30〜14:00、18:00〜23:00
水・木・金曜定休
TEL.0574-63-6664
https://taihouken.com/
Instagram @taihouken_opc

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2024年05月19日作成
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