【飛騨市神岡】金木戸屋「笹巻羊羹」/岐阜のおやつ

岐阜県にあるお菓子屋さんで出会った美味しいおやつを通して、そのお店の歴史や作り手さんの想いなどを紹介していく「岐阜のおやつ」
今回ご紹介するのは、飛騨市神岡にある「金木戸屋」さんです。


金木戸屋

「金木戸屋」の名前は旧上宝村の双六川上流にある金木戸という地名に由来。菓子屋として100年以上の歴史があり、現在は3代目の金田幸夫さんが継ぐ。代表銘菓は「笹巻羊羹」。


今回紹介するのは、“鉱山のまち”として栄えてきた飛騨市神岡町にお店を構える「金木戸屋」さんです。

▶︎100年以上の歴史を持つ金木戸屋の銘菓「笹巻羊羹」

外観

神岡町に古くから続く商店街の中にある「金木戸屋」さん。笹巻羊羹と彫られた立派な看板が掲げられています。

金田さん親子

現在は3代目の金田幸夫さんが100年以上続く看板を守っています。お店をお手伝いされている娘の真季さんも一緒に温かく迎えてくれました。

店内には季節の和菓子や贈答にもぴったりなお菓子がずらり。まんまるいお月さまをイメージした「満月最中」をはじめ、「かすていら」や「笹サブレ」といった定番商品のほか、秋は「栗よせ」、冬はよもぎや栃の実などを練りこんだ「杵つき餅」なども並びます。

でも、こちらのお店の看板商品といえば、なんといっても「笹巻羊羹」。

本物の笹の葉にくるまれた羊羹なんです!

笹巻羊羹イメージカット
笹巻羊羹 5個袋入り¥840(税込) ※箱入り(10個〜)もあり。賞味期限は約1週間

女流俳人の第一人者として知られる中村汀女(ていじょ)さんも、著書「ふるさとの菓子」の中で笹巻羊羹について書き記したほど気に入られていたのだとか。

笹の葉を広げると、中から可愛らしい羊羹が現れます。みずみずしく艶やかな羊羹の表面に笹の葉脈が浮かび上がって、思わず声を上げてしまいそうな美しさです。お茶の席でこんなお菓子が出てきたら、会話が弾みそうですね。

皿に盛った様子

一切れ味わうと、ほのかな笹の香りと、なめらかな口触り、羊羹の甘みにほっこり。北海道産小豆に砂糖と寒天だけというシンプルな素材で作られた素朴な味わいも、長年多くの人々に愛され続けてきた理由なのでしょう。

抹茶はもちろん、少し濃いめに淹れた煎茶と一緒に味わうのがおすすめですが、意外とコーヒーにも合いそうです。

▶︎一からすべて手作りの笹巻羊羹

それにしても、この笹巻羊羹って、どんな風につくられているのでしょうか…。今回は特別に、笹巻羊羹の製造工場を見学させていただきました!

工場

お店の近くにある工場の入り口には「金木戸屋製菓部」の看板が。

「初代にあたる私のお爺さんが、ある日、キノコを採りに山に入ったけれど収穫がなく、近くの石に腰掛けていたときに、青々とした熊笹が目の前で風になびいとったんだそうです。それで、それを見てなんとかこの笹の葉をお菓子に利用できないかと思って、山で喉が乾いたときに笹をくるっと折ってコップの代わりにして水を汲んだことをヒントに、何年も試行錯誤した末に生まれたのが、この笹巻羊羹なんですよ」と幸夫さんが教えてくれました。

羊羹のもととなる羊羹液は、寒天液に自家製のあんと砂糖を入れて、強火で煮詰めながら作ります。そして、笹の葉をくるりと巻いて留めたものの中に、葉が焼けてしまわないように少し冷まして粗熱を取った羊羹液を一つずつ注ぎます。

青々として美しい笹の葉の中にたっぷりと注がれた羊羹液。これを冷蔵庫などには入れず、室温で冷まして固めると、笹巻羊羹が完成します。

羊羹液を入れた笹

今も熊笹の葉は幸夫さんが近くの山に入って集めています。「山は熊やマムシが出ることもあるし、鹿が笹を食べてしまうこともあるし、笹の葉を集めるのは、とにかく大変なんです。今まで、熊には200回くらい会ったかな」。そんな苦労がありながらも、夏には毎日山に入り、必要な分だけの笹の葉を集めます。

「100年以上前にこんなお菓子が考えられたってことが、やっぱりすごいわな。俺にはこれを超えるお菓子は作れん」と笑う幸夫さん。だからこそ、本物の笹を使い、製法もほぼ変えることなく、代々続く「笹巻羊羹」の味を守り続けているのです。

▶︎羊羹を包むのも、一つひとつ手作業で。

笹巻羊羹のもう一つの大きな特徴が、笹の閉じ方です。真季さんに閉じ方を見せていただきました。

包み方1

①冷めて固まった羊羹を持ち、左右のと手前の笹を折り込みます。

包み方3

②後ろにある笹を手前に折り曲げます。

包み方6

③細く切ったいぐさを巻いて結び、端を切って整えます。

完成

④笹巻羊羹の完成です!

***

一つひとつの羊羹に、これほどの手間と時間、大切にしてきた想いが込められているのだと知ると、笹にくるまれた羊羹がますます愛おしく思えてきます。

飛騨神岡におでかけの際には、ぜひ笹巻羊羹をおみやげに。また、電話にて発送も受け付けてくれますので、そちらもご利用くださいね。


金木戸屋

住所:飛騨市神岡町船津1077-1

営業時間:8:30〜18:30

定休日:火曜日、水曜日

TEL&FAX:0578-82-0172
※電話注文にて、全国発送も可能です

WEB:https://kanakidoya.com/


▷飛騨神岡へでかけませんか

神岡鉱山によって栄えた飛騨市神岡町。
小高い場所に建つ「神岡城」からは、まちの中心を流れる高原川に沿うように、両岸に民家や商店が立ち並ぶ様子がよく見えます。
また、飛騨神岡には「スーパーカミオカンデ」をはじめとする、宇宙研究拠点が集まっており、飛騨神岡 道の駅「スカイドーム神岡」に併設された「ひだ宇宙科学館 カミオカラボ」では、さまざまな研究について学ぶことができます。
意外な発見や出会いがある飛騨神岡に、ふらりとおでかけしてみませんか。

《さかだち編集部が飛騨神岡を訪れたときの記事はこちら》
【飛騨市】さかだちぶらり旅・飛騨神岡《前編/神岡城・茶屋MARU》
【飛騨市】さかだちぶらり旅・飛騨神岡《後編/カミオカラボ》

2020年10月15日作成
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