【THE GIFTS SHOP】真工藝(高山市)

岐阜県北部、飛騨高山の古い街並みに工房を構える「真工藝」さん。独自の手法で作られた木版手染のぬいぐるみは、どれも愛くるしい表情や、ころんとしたフォルム、鮮やかかつぬくもりのある色合いで、いくつも集めたくなります。

THE GIFTS SHOP岐阜ホールでも人気のあるこの木版手染のぬいぐるみは、どのように生まれたのでしょうか?高山市にある真工藝さんの工房を訪ね、お義父様が創業者、ご主人が2代目である田中博子さんにお話を伺いました。

▶︎版画皿からはじまった、オリジナルの商品作り

1972年に創業した真工藝さんは、もともとは建築デザインなどの仕事をされていました。あるとき、高山市内のお土産屋さんから新店舗の設計デザインの依頼を受けたときに「何か商品も作ってほしい」とお願いされ、初代夫婦が木版手摺りの版画皿を制作。それが、木版を応用した商品づくりのはじまりとなったのです。

「父は市展の委員も務めるくらい、絵画への造詣が深い人でした。版画皿の絵柄は、当初は飛騨高山の景色だけでなく、全国各地を巡ってスケッチした風景を版画皿にして販売していたんですよ」と博子さん。

その木版画は、日本各地の四季やの景色や行事、暮らしの営みが細やかに描かれていて、まるで立体的に浮かび上がってくるかのよう。現在も制作されているこの版画皿は、特に日本らしいものを求める外国の方に人気があるそうです。

▶︎飛騨高山の自然や文化が宿った木版手染のぬいぐるみ

一方で、お義母様は染色家だったため、版画を紙ではなく布に摺って何か作ることはできないかと夫婦で試行錯誤し、生まれたのが木版手染のぬいぐるみです。

飛騨高山では、早春には残雪の間からふきのとうが顔を出し、山王祭りの12台の屋台が麗姿を披露します。雨期が過ぎると夏が来て、御嶽、乗鞍、槍ヶ岳、穂高、笠ヶ岳、黒部吾郎岳といった山々の山開きが始まります。夏の終わりには盆踊りのおはやしが聞こえ、陣屋前の朝市は夏野菜から秋の味覚へ。そして、国分寺の大銀杏が境内に黄色い絨毯を敷きつめると、北風が吹き雪が舞い始めます…。

こうした季節の移ろいや飛騨の匠の技が残る伝統美、豊かな自然の中で、ぬいぐるみは生まれたのです。

現在、この木版手染のぬいぐるみは野鳥や魚、干支など何十種類もありますが、最初につくられたのはキジと午(うま)でした。

キジから始まった野鳥のシリーズは、飛騨高山の豊かな自然の中にいる鳥がモチーフで、30種類にも及びます。

一方で、イワナなどの魚は、釣りが好きな2代目のご主人が考案されたものが多いのだそう。

干支のぬいぐるみは、最初に作られた午のぬいぐるみが午年によく売れたことがきっかけで、それ以降、毎年干支の動物が作られるようになりました。その後は、ひとまわり小さな「仔」シリーズが展開されています。

ところで、動物のぬいぐるみをじっくり見てみると、羽やウロコ、毛以外にも、草花などさまざまなモチーフが散りばめられていることに気づきます。実はこれらの絵柄にはすべて意味があり、その動物にまつわる物語がひそんでいるんです。

例えば、野鳥のウソにはエサとしている桜や梅の蕾が、亥(いのしし)には笹原を颯爽と駆けるイメージから笹の葉が描かれています。一つ一つのぬいぐるみに込められた物語を知ると、いっそう愛着がわいてきますね!

▶︎手作業で、丁寧に。思いと技をこめて作る

一つ一つ味わいがある木版手染めのぬいぐるみは、どのように作られているのでしょうか。

「真工藝のぬいぐるみは、あくまで作家ものというよりも、『民藝』として長く愛され続けてほしいと思っています」と博子さん。そのため、ぬいぐるみのデザインはお義父様や2代目のご主人がすべて考案していますが、その後の制作は分業となり、各工程を職人さんが担っています。

ぬいぐるみは、デザインを作る、版を作る、版に色をのせて布に摺る、布を縫い合わせる、籾殻を詰めるといった工程を経てできあがります。今回は特別に博子さんに版を摺る様子を見せていただきました。

まずは、版木に染料を塗るところから。一般的な多色摺版画であれば、1枚の版に1色ずつ染料をのせて摺りますが、伸縮性のある布に摺る場合は、1枚の版にすべての色をのせて摺り上げます。よく見ると、版木はそれぞれの色が混ざらないように彫りが深くなっています。

染料も色によっては毎回調合して作られています。そのため、少しづつ色合いが違って、一つとして同じものはない仕上がりになるんですね。

すべての染料をのせたら、版木に生木綿 (きもめん)をかぶせ、ばれんを押し当てて摺っていきます。

何回かばれんを往復させると、少しずつ絵柄が浮かび上がってきました!干支シリーズでも人気がある卯(うさぎ)の桃色の目や耳、山吹色の兎菊の模様が鮮やかに現れます。

摺り上げられた生木綿は、この後、高温で蒸して色止めを行います。それを縫い合わせ、籾殻(もみがら)を詰めたら完成です!中に詰めるものも、綿をはじめ、さまざまな素材で試した結果、安定感や握り心地を踏まえて籾殻に決められたそうです。

真工藝さんが一つ一つの工程や材料に意味やこだわりを込めて、一から作りあげる木版手染のぬいぐるみ。だからこそ、多くの人の心をとらえ、愛され続けているのでしょう。

▶︎玄関やお部屋に飾ると、そこがなごみの空間に

干支や野鳥、魚以外にも幅広く展開されていて、お雛様やこいのぼりなど、季節の行事にちなんだアイテムも好評です。「最近はなかなか大きなお雛様を飾れないご家庭も多いので、玄関やお部屋など、ちょっとした場所にも飾りやすいお雛様のぬいぐるみは人気がありますよ」と博子さん。

そして、こちらは「ごめんね犬」!ご家族で飼われていた猟犬が、怒られてすねていた様子をぬいぐるみにしたのだそう!可愛らしいネーミングにも心惹かれますよね。

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和の雰囲気がありながら、現代的な洋風のお部屋に飾ってもなじんでくれる木版手染めのぬいぐるみ。可愛らしい佇まいはもちろん、作り上げられるまでの過程や込められた思いを知ると、ますます愛おしさが増してきますね。

2022年の干支は寅。ぜひ、ご自宅のお気に入りの場所に迎えて、癒しの空間をつくってみてはいかがでしょうか?

真工藝さんの木版染のぬいぐるみは、「THE GIFTS SHOP」の店頭やオンラインストアでも購入可能ですよ!


真工藝

住所:岐阜県高山市八軒町1丁目86

営業時間:10:00~17:00

定休日:火曜日

TEL:0577-32-1750

WEBサイト:http://shinkougei.sblo.jp/

Instagram:https://www.instagram.com/shinkougei/?hl=ja

2021年10月10日作成
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