《TOFU magazine 旅する岐阜 26》/【川辺町】環の森

TOFU magazine 26」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第26回は川辺町を訪れました。

《旅する岐阜26 Kawabe 》

荒れた地元の里山を再生し
“循環する森”を次の世代に繋ぐ

町の約7割を山林が占める加茂郡川辺町で、原木しいたけを育て、里山保全に情熱を注ぐ親子がいる。2018年に「環(わ)の森」を立ち上げた横田尚人さんと岳登さん。現場を訪ねると、背格好も笑い方もそっくりな二人が迎えてくれた。

尚人さんは子どもの頃から、父親が約50年前に始めたしいたけの原木栽培を手伝い、25年ほど前からは2人の弟と「しいたけブラザーズ」を結成して、農場経営や事業拡大に取り組んできた。

原木栽培とは、伐採した天然木に種菌を植え付け、樹木の栄養分でしいたけを栽培する農法だ。やがて「原木から自分の手で育てたい」と植林に着手する。「森や公園でドングリを拾うところからのスタートで、畑で苗木になるまで育てて、ようやく山に植えるんです」。

だが、他県から良質な原木を仕入れてしいたけの効率的な計画生産を行ってきた代わりに、周囲の山林は活用されぬまま竹藪が広がり、イノシシやシカの被害が増え、すっかり荒れ果てていた。

「里山は、人が手を入れてこそ、その景色も資源も守られていくんだ」。

尚人さんは、原木に適したコナラや、より肉厚で大きなしいたけが育つクヌギ、アベマキなどの広葉樹を山に植え、育て、それを原木にして安全で美味しいしいたけを栽培することで、地元の荒れた里山を再生し、守り、次の世代に繋ごうと決意する。

 里山を復活させるのは容易なことではない。一度すべての木や竹を伐採してリセットし、苗木を植え、数年は下草刈りを行う。木々が育ち、原木として伐採できるのは15〜20年後だ。それでも毎年、少しずつ里山を再生し、いずれはドングリ採取から植林、伐採、原木栽培が“循環する森”を作りたい。その夢に専念するため、兄弟で経営していた会社から独立し、岳登さんとともに設立したのが「環の森」だった。

「僕は5人兄弟の次男で、祖父の山の手伝いをしていて、自然と農業や林業に興味を持って」と岳登さん。高校で畜産を、岐阜県立森林文化アカデミーで林業を学んだ後に、父と一緒に山や農場で汗を流す暮らしを選んだ。

二人は同じ夢を持ち、その先に同じ20年後の森の姿を描いている。

「環の森」で採れたばかりの原木しいたけを焼いて味わってみた。強い香り。意外にもつるんとした食感と肉厚で確かな弾力。噛みしめると、しいたけの概念を覆す、味わったこのない美味しさに言葉を失った。

そう、このしいたけには、あの山々の木々の生命が、はちきれんばかりにギュッと詰まっているのだ。ふっと、横田さん親子がうれしそうに笑う顔が浮かんだ。

「環の森」の原木しいたけは春、秋、冬の収穫期にネット通販や近隣スーパー、JAめぐみのとれったひろば可児店などで販 売。完熟ほだ木、植菌済み原木、薪なども直接購入が可能。

環の森
加茂郡川辺町鹿塩982-1
TEL.090-7040-5392
https://www.wanomori.net/

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2022年05月10日作成
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