《TOFU magazine 旅する岐阜 02》/【山県市】舟伏の里へ おんせぇよぉ〜
「TOFU magazine 02」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第2回は山県市にある廃校レストランを訪れました。
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《旅する岐阜02 Yamagata》
山県市の山間にある廃校で味わう
おばあちゃんのふるさと料理
慣れた手つきでキャベツを刻むおばあちゃんたち。手と一緒に、口もせわしなく動く。ぽんぽんとテンポ良く交わされる会話と、にぎやかな笑い声。
ふと、ここがすでに廃校となった小学校のランチルームであることを忘れてしまう。
岐阜県山県市の美山地域にある北山地区は、その地名通り、美しい山々に囲まれた小さな集落だ。
ここでかつて、多くの子どもたちが元気に通った北山小学校。過疎化や住民の高齢化により1997年に閉校を迎えたが、2013年にその校舎を活用した農家レストラン「舟伏の里へ おんせぇよぉ〜」に生まれ変わった。
「おんせぇよぉ〜」とは地元の言葉で「いらっしゃい」という意味。地域のおばあちゃんたちが手作り料理で客を迎える。
もともとNPO団体に所属して山県市の地域づくりに取り組んでいた縁で声がかかり、このレストランの立ち上げから運営にまで深く関わる山口晋一さんは、自身も山県市の生まれ。
「実は僕はもう少し南の方で育ったんで、この辺りは同じ山県市でも初めて来た土地って感じだったんですが、山も川もきれいだし、おばあちゃんたちとも話してるうちに、どんどん仲良くなって。ここがあることで、みんなが喜んでくれることが嬉しいんです」。
営業日はおばあちゃんが集まり、腕によりをかけて昔ながらの家庭料理を作る。
大根と人参、お揚げを濃いめの味付けで炊いて、ご飯とまぜる五目ご飯。手作り味噌で作る味噌汁に、山菜や野菜の天ぷら。煮豆は少し硬めに煮る。
お客さんは年配の夫婦や幼い子ども連れの家族、若いカップルとさまざま。県外からはるばる訪れる人も多い。
「最初に山口くんが誘ってくれてね。66歳くらいから、もう7年かな」。
オープン当初からここで調理を担当する三島広子さんは、この場所が大好きだという。
「楽しいでねぇ。私らはほとんどみんな、ここが木造の校舎やった頃に一緒に通ってた幼なじみなの」。どうりで調理場がにぎやかなはずだ。
広子さんが小学校に入った頃に始まった給食は、味噌汁とコッペパンに脱脂粉乳のミルクだけだったこと。唯一、パンの耳を揚げてもらったのが美味しかったこと。時にはお客さんとも、そんな昔話や他愛ないおしゃべりを楽しむ。
「実家に帰ってきたみたい、って畳で昼寝して帰る人もおるよ。ゆっくりしてってね」。
おばあちゃんたちの素朴で滋味深い料理とあったかい笑顔に、元気が湧く。きっとまた訪れたくなる。ここは誰にとっても懐かしい、ふるさとなのかもしれない。
舟伏の里へ おんせぇよぉ~
山県市神崎100 北山交流センター1F
金・土・日曜の11:00~15:00(LO14:30)のみ営業 ※12月~2月末とお盆は休み
TEL.080-2648-8175 https://gifu-yamagata.wixsite.com/onseiyo/
※営業日時については必ず事前にご確認ください
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