《TOFU magazine 旅する岐阜 38》/【多治見市】ギャルリももぐさ 安藤雅信

TOFU magazine 38」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第38回は多治見市を訪れました。

《旅する岐阜38 Tajimi》

美術と工芸の境界を超え
“生活”の中に美を問う

岐阜県多治見市。1300年以上の歴史を持つ“美濃焼”の産地に、国内外から愛好者が訪れるアートギャラリーがある。街の喧騒を逃れ、少し心許なくなるような山道を進んだ先、木々の緑に覆われた場所に現れる「ギャルリももぐさ」。

陶作家、美術家、茶人の顔を持ち、ギャルリももぐさを主宰する安藤雅信さんは、1957年に多治見市にある美濃焼の卸問屋に生まれた。

美術を志し、武蔵野美術大学彫刻学科に進学。だが、近代西洋美術が主流の授業に「全然面白くもないし、なんで具象や裸体を描かなくちゃいけないんだ、って思ってさ(笑)」。大学のジャズ研究会に入り、音楽に没頭。必死で黒人ミュージシャンの音楽をコピーし、理論を学んだ。しかし、行き着いたのは“どれほど努力をしても、ネイティブには敵わない”という事実。そして、それは美術にも通じると気づく。なぜ、自分が近代西洋美術に違和感を抱いたのか、合点がいった。

では、自身のネイティブとは何か。安藤さんは「侘び寂び」や「もののあはれ」といった日本人特有の美意識や思想、哲学へと関心を深めていく。卒業後、帰郷してやきもので現代美術作品を制作し、陶作家の道を歩む。

結婚して子どもが生まれ、自身の生活も変化していた1997年、転機が訪れた。東京・目白の「古道具坂田」で開催されたオランダ白釉陶器展で手にした古い皿との出合い。「リムの広い、深みと歪みのある皿に、これだ!と思って」。

オランダの庶民の食卓で使われてきた素朴な皿を自分の技術と日本の土で再現し、日常の食卓で和洋中どんな料理にも添い、余白のあるうつわを制作しようと決意。材料や調合、焼成を幾度も試し、マットな白い釉薬の再現に3年もの歳月を費やして、今では安藤さんの代名詞となった「オランダ皿」が誕生した。

1998年、愛知県名古屋市鳴海に建っていた築100年以上の民家を移築し、ギャルリももぐさを開廊。

非日常的なホワイトキューブではなく、茶室を備えた数寄屋造の建物、すなわち生活空間の中で展示を行うことで、作り手と使う者との間に密接な感情のやり取りを生み、ものとの関係を見つめ直す場を作り出した。当初、10メートルもの落差があった谷間にダンプ1000台分の土を運んで整地した1300坪の敷地は、現在5000坪に拡張。

「ここは常に未完成なんですよ。美術への情熱だけでやってきて、これからも行くとこまで突っ走るしかないね」。

さらりと言ってのける安藤さんとは、まさに思考の人であり、実践の人である。

着る・食べる・住むという“生活”の基本から見つめた美術や工芸の在り方を企画展と常設展で紹介する「ギャルリももぐさ」。オランダシリーズをはじめとした安藤さんのうつわも購入可能。

ギャルリももぐさ 
多治見市東栄町2-8-16
TEL.0572-21-3368 
https://momogusa.jp/
Instagram @momogusa

***

「TOFU magazine」は、東京や岐阜を中心とした配布店舗にて無料で入手いただけるほか、「岐阜トーキョー ONLINE STORE」でも、送料のみでご購入いただけます。

2025年08月31日作成
関連記事