《TOFU magazine 旅する岐阜 32》/【高山市】閃き堂
「TOFU magazine 32」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第32回は高山市を訪れました。
《旅する岐阜32 Takayama 》
古民家を改装した喫茶で過ごす
“閃き”に満ちた時間
城下町の面影が残る「古い町並」で知られる高山市街地から、車で約20分。山間の集落へ向かう道沿いに、古民家を改装した喫茶と雑貨の店「閃(ひらめ)き堂」が現れる。“閃き”とは、素晴らしい考えが瞬間的に思い浮かぶこと。
「閃くって言葉が好きなんですよ。門に人って書くんですけど、そうか、人は門をくぐって閃くのか!って思って」。そんな小さな発見が楽しくて仕方がないように、彼は無邪気に笑う。
店主の谷澤智文さんは、ミュージシャンであり、世界を旅した経歴を持つ。中学3年の時に友人に誘われ、バンドを組みギターを始めたのが音楽との出逢い。高校時代も音楽に没頭し、大学進学を機に上京するも2カ月で自主退学し、アルバイトをしながら精力的に音楽活動を続け、タニザワトモフミ名義でメジャーデビューを果たした。人気アニメ「君に届け」のオープニング主題歌を2期連続で担当し、その後も変化に富んだ作品群をリリース。
だが、アウトプットばかりの日々に焦燥感が募る。「大きなインプットに飢えていたんです。その刺激の後、どれくらい変化していけるのか。東日本大震災があって、生きてるならやりたいことを本気でやるしかないって突きつけられてもいて」。
居ても立っても居られず、所属レーベルを辞めて、2012年9月から1年間、地球一周の旅に出た。
「人生で一番長く感じる1年間でしたね。ひとり旅の孤独や、無数の出会いと別れ。求めていた以上の刺激とインプットを得て、つくる音楽も大きく変化して、生きていくことがずっと楽しみになりました」。
帰国後、妻の由香里さんが双子を授かったこともあり、地元への移住を決意。生まれ育った飛騨市から車で30分ほどの高山市内で、江戸後期に建てられた古民家を譲り受け、丸1年をかけて改装。2019年に「閃き堂」をオープンした。現在は由香里さんと3人の子どもたちと、賑やかで充実した日々を暮らす。
実は「閃き堂」のエントランスには、訪れる客を圧倒的な非日常へと誘う、ある仕掛けが施されている。そして、扉を開いた先で出逢うのは、智文さんが淹れる自家焙煎のスペシャルティコーヒーと、由香里さんが作る4種類のオリジナルスパイスカレー、地元作家らによるアクセサリーやうつわ、衣服などの雑貨。心地よい音楽。壁一面の本棚に並ぶ2500冊を超えるジャンルレスな漫画と本たち。
日常からふっと解き放たれ、しばし、閃きが散りばめられた世界へとトリップして、物思いに耽り、生きることを楽しむ。
そんな空間と時間が、ここにある。
たっぷり生姜の爽やかな刺激と複雑なスパイス感、絶妙なトッピングが癖になるカレー「SPECIAL」は税込1,400円。
智文さんが旅の後にリリースしたCDはすべて試聴、購入可能。
閃き堂
高山市国府町宇津江1492
11:00~16:00 水・木曜定休
TEL.0577-70-8516
https://www.hiramekido.com/
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