《TOFU magazine 旅する岐阜 17》/【東白川村】新世紀工房 茶師 田口雅士

TOFU magazine 17」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第17回は東白川村を訪れました。

《旅する岐阜17 Higashishirakawa 》

東白川村の美しい茶畑から
生まれる美濃白川茶

銘茶「美濃白川茶」発祥の地である東白川村。山々の斜面に茶畑が点在する。村を流れる白川から立つ朝霧が太陽の光を乱反射させる被覆効果もあって、この地の茶葉はゆるやかに柔らかく育ち、香りや旨み、苦味、渋みのバランスが取れた良いお茶になるのだという。

「石の多い痩せた土質なんですが、かえって木々がミネラルを蓄えようとして、土の香り、地の香りがする、さわやかな香気のお茶が育つんです」。もうすぐ初摘みを迎える茶畑で、田口雅士さんがそう教えてくれた。

東白川村で3代続く茶農家に生まれ、松雪園(しょうせつえん)茶舗を営む両親のもとで育った田口さん。

「実は高校を卒業するまで茶業を継ごうとは、これっぽっちも思ってなかったんですよ」。だが、進路相談で先生が渡してくれたパンフレットが岐路となった。静岡県にある農林水産省茶業試験場(現・野菜茶業研究所)。全国から茶商や茶農家の後継者ら20名が集い、茶の歴史や品種、機能性といった多岐にわたる講義や、製茶の実習などを通して茶について学ぶ国立研究機関の研修施設だった。

「まあ、やってみるか」。軽い気持ちで研修生になり、寮生活で朝から晩まで、とにかく茶づくしの日々が始まった。「人生を変えた2年間でした」。

最もカルチャーショックを受けたのは、日本中に自分と同じ環境の仲間がいるということ。静岡、福岡、鹿児島、埼玉、沖縄…。「今もみんなが茶業を頑張っている。一人じゃない、仲間がいる。それだけでやりがいが持てるんです」。

卒業後、静岡県内の大きな茶商に就職。2年後、東白川村の村長から直々に、2000年に公設された第三セクターに来ないかと声が掛かり、帰郷を決意した。2003年、22歳で「新世紀工房」に入社。

現在は茶師として、村の茶農家から仕入れた荒茶を工場でブレンドして製茶し、「茶蔵園」のブランドで30 種類以上の製品を展開する。茶葉の状態や配合はもちろん、火入れの温度の1℃の違いにも敏感に、何度も利き茶をしながら、〝東白川村らしい〞お茶を作り上げる。

同時に、松雪園茶舗4代目として父母とともに茶畑にも立つ。「毎朝、必ず自分の家のお茶を飲みます。一日の節目にお茶を飲むことで、毎日小さな節を刻むっていうか。自分のアイデンティティを確かめるんです」。

茶蔵園の一番茶。神賜-しんし- 2,160円、天籟-てんらい- 1,620円、空鏡-くうきょう- 1,296円、清流-せいりゅう- 1,080円、薫風 -くんぷう- 864円(すべてリーフ90g入り・税込)

茶蔵園のお茶を淹れて味わってみた。まず、匂い立つ香り。そして、まろやかな甘みに驚く。一番茶の若々しさ、深い旨み、心地よい苦味。

東白川村の風土、テロワールを感じるそのお茶に、田口さんと眺めた美しい茶畑の景色が思い浮かんだ。

新世紀工房 茶蔵園
岐阜県加茂郡東白川村越原1061 道の駅茶の里東白川
9:00~17:00(1~3月中旬は9:30~16:30) 
無休(11月~4月は火曜定休)
TEL.0574-78-3123 
https://chanosato.gifu.jp/

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2021年08月08日作成
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