《TOFU magazine 旅する岐阜 31》/【岐阜市】凪の木 岩水ゆきゑ・林陽寺 峰雪

TOFU magazine 31」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第31回は岐阜市を訪れました。

《旅する岐阜31 Gifu 》

ヨガと仏教、深い呼吸と瞑想で
自分の心と本質に向き合う

夜の境内はしんと静まり返っていた。寺の本堂で毎週開かれるヨガのレッスン。明かりを落としたほの暗い部屋に、岩水ゆきゑさんの静かに導くような言葉が響く。

「天に向けて手を伸ばしましょう。空を思い浮かべて。曇りの日でも雲の上には、いつも青空が広がっています」。

岐阜市北東部にある曹洞宗(そうとうしゅう)林陽寺。

岩水龍峰(りゅうほう)住職の三女として生まれたゆきゑさんは17歳から1年間、メキシコに留学。日本人がいない環境、飛び交うスペイン語、目の当たりにしたストリートチルドレンの存在。多くの人が毎週ミサに通い、カトリック教が生活に根付いていることも、ハグやキスといった愛情表現が実に豊かなことも、何もかもにカルチャーショックを受けた。

「私はお寺に生まれただけで、自分は無宗教だと思っていたんです。でも、宗教って自分で選ぶものなんだと実感したり、みんな家族をとても大切にしてて、家族ってチームなんだって思ったり」。

異文化に飛び込み、葛藤や刺激の中で祖国や自身を客観的に見つめる視点を得て、視野も知見もぐんと広がった。高校卒業後、京都外国語大学でスペイン語を学び、在学中に再び1年間、メキシコに留学。現地のストリートに溢れる音楽やダンスに魅了され、帰国後に通い始めたラテンダンススクールでヨガとも出合う。

大阪や東京で営業や広報の仕事に就いた後、2009年に帰郷。自身のルーツである林陽寺の寺おこしに着手。寺でイベントを開き、ヨガの教室を始めた。

「生まれ育ったこの場所をずっと嫌いだと思っていたけど、一度離れたことで、気付けたんですね。お寺って、人々の暮らしの〝祈り〞の中から生まれた、みんなの場所。可能性がある、すごい場所なのかもと思えたんです。私はここが好きなんだって」。

2019年11月、ゆきゑさんは尼僧となった。僧名は峰雪(ほうせつ)。翌春には剃髪して約1年間、静岡県の曹洞宗可睡斎(かすいさい)専門僧堂で厳しい修行を積む。

現在はヨガレッスンを行う「凪(なぎ)の木」と寺でイベントを開催する「巡巡(るる)の間」を主宰し、僧侶として寺の法務も勤める。

「ヨがと仏教は通じるところがあるんです。型や行を実践する中で、深い呼吸や瞑想をしていると、自分の本質が視え、安心して自由になれる。自分の我や家族への反発、求められる役割に対峙し自問自答でかたくなった心が、ふっと緩み、自分に「大丈夫」と言ってあげられるようになるんです、と穏やかに笑うゆきゑさん。

境内に聳(そび)える樹齢200年余の枝垂れ桜は蕾が膨らみ始めている。もうすぐ、林陽寺に春が訪れる。

林陽寺山門を覆う見事な枝垂れ桜は3月下旬が見頃。 2023年3月26日は「春のしだれ桜まつり」と音楽会、4月8日は「∞の市(ハチノイチ)」が開催される。

林陽寺 凪の木・巡巡の間
岐阜市岩田西3-402
https://housetsu.jp/
Instgram:@housetsu_yukie @lulunoma_rinyouji

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2023年06月23日作成
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