《TOFU magazine 旅する岐阜 29》/【養老町】養老サイダー復刻合同会社

TOFU magazine 29」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第29回は養老町を訪れました。

《旅する岐阜29 Yoro 》

一世紀にわたって愛された
幻の養老サイダーを復刻

養老郡養老町。その地名の起源は奈良時代へと遡る。717年に元正天皇がこの地へ幸行し、訪れた美泉に感銘を受けて「醴泉は、美泉なり。以て老を養うべし」と賞賛、元号を“養老”に改めたことが由来だ。その美泉は、孝行息子が父のために汲んだ水が酒に変わったという伝説が残る「養老の滝」とも、養老神社の境内に湧く「菊水泉」ともいわれる。

そんな養老山地の岩清水から「養老サイダー」は生まれた。

明治前期に大垣市で創業した清涼飲料水製造会社の2代目社主の日比野寅吉氏は、保養に訪れた養老公園で菊水泉の湧水を飲み、あまりの美味しさに驚いて、この名水でサイダーを作ろうと決意。工場を養老に移し、1900年に養老サイダーを発売すると、数々の博覧会で賞に輝いて評判を呼び、“東の三ツ矢、西の養老”といわれるほど人気を博した。だが、製造コストの高さや職人の高齢化、施設の老朽化、後継者不足などが重なり、2000年に製造を中止。100年の歴史は途絶え、幻のサイダーとなった。

「長年、観光協会会長を務めている私のところにも、なんとか養老サイダーを復活させられないか、という声が全国から非常によく届きました」と振り返るのは、復刻の立役者である老舗温泉旅館「滝元館遊季の里」5代目当主の中村一さん。「とはいえ、復活させるには資金も必要ですし、何よりレシピが残っていなかったんです」。

実現は難しいと諦めていたが、改元1300年を迎える2017年に向け、養老インターチェンジの開通を控えていたNEXCO中日本から復刻を提案されたことが、大きな転機となった。観光協会の有志でプロジェクトを立ち上げ、資金をクラウドファンディングで募った。さらに、計画を後押しするかのように、廃業した工場から奇跡的にレシピが見つかる。

「一気にプロジェクトが動き出しました。やる気さえあれば、なんとかなるものなんだと思いましたね」。

レシピをもとに大垣養老高校食品科学科の生徒らと当時の味の再現を試み、完成した6種類を試飲すると、明らかに一つだけに、皆の意見が一致した。「これが養老サイダーだ!」。

それは唯一、菊水泉の湧水で作られたものだった。 美しい緑色のボトルに王冠、昔のラベルまでも見事に再現し、復刻された養老サイダー。グラスに注ぎ、じっくりと味わう。

口中に広がるまろやかな甘み、しゅわりと弾ける炭酸、心地よい喉越し。清冽な岩清水のしぶきを思わせるような爽快感に、感動すら覚えるのは、きっと私だけではないだろう。

養老サイダーは養老町観光協会に加盟する旅館、飲食店、土産物店などで販売。1本290円(税込)。毎月、数量限定でオンライン 販売も行うが、ぜひとも養老町を訪れて現地で味わいたい。

養老サイダー復刻合同会社
養老郡養老町養老公園1290-208
https://yorocider.com/
Instagram:@yorocider

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2022年08月23日作成
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