《TOFU magazine 旅する岐阜 15》/【本巣市】ibumaki

TOFU magazine 15」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第15回は本巣市を訪れました。

《旅する岐阜15 Motosu》

自分の足元にある恵みを
大切に繋いでいく田舎の暮らし

本巣市金原。のどかな山里の風景が広がる山間の小さな集落で、彼女は田畑に立ち、パンを焼き、家族とともに豊かに暮らしている。

水谷真希子さんはインド学を専攻していた大学時代、仏教遺跡をめぐるために訪れたインドで、食文化の大切さに目覚めたという。

「食堂でチキンカレーを頼んだら、シェフがどこかに出かけて、まだあったかい鶏肉を持って帰ってきて…。それだけで30分以上かかって、結局、料理が出てきたのは1時間半後!でも、さっきまで生きていた新鮮なもの、自然に近いもの、安心なものをダイレクトに食べられることが、すごく大事だなって思ったんです」。

卒業後も東南アジアの国々をめぐる旅をした。そして、結婚や二人の娘の出産を経て、より食に対する意識が高まった。「大切な家族に、安心して食べられるものを美味しく食べてもらいたい」。

高校生の頃からパン作りを始め、2002年から「ibumaki」としてパン教室を開く真希子さんと、建築業を営むご主人は、二人とも岐阜市の出身。しかし、自分たちの手で安心な米や野菜を作る農的暮らしがしたいと、農業ができる場所を探して全国各地を訪れ、2007年にこの本巣市金原への移住を決めた。

まちとは違う空気感と家の前に広がる田畑が決め手だった。2年かけて古民家を改装し、それぞれに仕事もしながら、農家として作物を育て、3棟のログハウスを建て、パンを焼く石窯を造った。

「田舎暮らしの醍醐味は、自分たちでいかにでもクリエイトできること」と真希子さん。

「とにかく、ここは魅力的な場所。伝統食も素晴らしくて、栃餅を作ったり、春にはわらびやせりが採れ、山菜を採りに山の中の獣の匂いがする道なき道を歩いたり。今、自分が足踏みするこの場所にお宝がたくさんあって、恵みにあふれていると思うと、もう嬉しくて、わくわくして」と瞳を輝かせる。「地域の方にもこの地で暮らす知恵や知識を教わり、子どもたちも大切にしていただいて、甘えてばかりです」。

この土地に暮らし、田畑で育てた作物や山の実りを使ったパンや料理の教室を開き、〝物語のある食〞をテーマに活動をしながら、ゆっくりと地域に馴染んでいくうちに、自然な流れで週一日のカフェの営業も始まった。ibumakiのibuはインドネシア語で、母なるものの総称だ。

“マキお母さん”が自家米酵母を使って石窯で焼き上げるパンや大地の恵みで作る料理は、彼女と家族、地域をゆるやかに繋ぐ。「田舎って、最高!」。そう笑う真希子さんは、最高にチャーミングだ。

ibumaki
本巣市金原
http://www.ibumaki.com

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2021年06月13日作成
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