《TOFU magazine 旅する岐阜 14》/【垂井町】moily

TOFU magazine 14」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第14回は垂井町を訪れました。

《旅する岐阜14 Tarui》

カンボジアの小さな村の
みんなとカゴでしあわせに

「私いつも、ほんとにしあわせだなって思うんです」と彼女は笑う。カンボジアの小さな村で編まれたカゴを、愛しそうに抱えながら。

不破郡垂井町で「moily」を営む池宮聖実さん。2009年、大学3年生のとき、一週間のボランティアツアーで訪れたカンボジアが彼女の人生を大きく変えた。生き生きとおおらかに暮らす現地の人々の笑顔は、渡航前に勝手に思い描いていた貧しい国の暗いイメージとは全く違っていた。

「私は本当の世界をまだ何も知らない。もっと自分の目で〝リアル〞な世界を見たい」。アルバイトで資金を貯め、卒業と同時にバックパックで10カ月間、16カ国を巡る旅に出た。東南アジアやモンゴル、中国、インド、中東、アフリカ、南米。出会う人々と語り、笑い、泣き、聖実さんのリアルな世界はぐんと広がった。

同時に、貧困から派生する児童就労や暴力、就労難、売春といった、彼ら彼女らが抱える厳しい現実や課題も知る。自分が出会った人たちの力になりたい。だが、「じゃあ、キヨミに何ができるの?」と聞かれて、答えられなかった。

2014年、すべての始まりだったカンボジアを再び訪れ、市場でラペアという植物で編んだカゴと出合い、カゴ編みで生計を立てる小さな村に一年近く通って、職人たちと少しずつ信頼関係を築いた。

そして、デザイン性とクオリティの高いカゴを発注してフェアな金額で買い取り、日本で販売するmoilyを立ち上げた。村に継続的な仕事を作ることが、彼らが貧困などの課題を自分たちで解決する手段になると考えたからだった。

最初は何度も衝突があった。こで対話を重ねるうちに気が付いた。「彼らが大切にしていること、家族のつながりや食事、年一回旅行、そういうものを壊してまで仕事を作ることは、彼らにとってのしあわせじゃない」。

食べるためのライスワークではなく、豊かに生きるためのライフワークを作り、お互いに支え合う対等な関係でいたい。対話と試行錯誤を積み重ね、moilyは少しずつ軌道に乗った。村には電気が通った。ノーちゃんはカゴを作って高校に通い、マイさんは毎月一人で暮らせる分のカゴを作るようになった。

ロムリアップ、ホーイチ、チョンボ…。カゴのタグに記された名前を見ていると、子どもをあやし、おしゃべりをし、笑い合いながら、カゴを編む村の女性たちの姿が思い浮かぶようだ。

聖実さんは言う。「moilyを通して、少しでもしあわせを感じる人が増えたら嬉しい。それが私のしあわせなんです」。

moily
不破郡垂井町敷原173 カフェ結敷地内
土・日曜の13:00~17:00のみ営業
https://www.moily-bk.com/
Instagram @moily.bk

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2021年05月16日作成
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