《TOFU magazine 旅する岐阜 12》/【笠松町】笠松競馬場 深澤杏花騎手
「TOFU magazine 12」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第12回は笠松町を訪れました。
《旅する岐阜12 Kasamatsu》
リーディングジョッキーを目指し
レースに挑む19歳の女性騎手
初めて訪れた競馬場は思いの外、のどかだった。名馬・オグリキャップや名手・安藤勝己らを輩出した羽島郡笠松町にある「笠松競馬場」で今年最初に開催された新春レース。
観覧席には、年配の男性のみならず、若いカップルや小さな子どもを連れた母親も見かけられる。馬券購入締め切りのアナウンスが流れ、レースが始まった。
ゲートが開き、一斉に馬が走り出す。
砂を撒き上げ駆ける馬に腰を浮かせてまたがり、手綱と鞭を操る騎手の中に、笠松競馬場で20年ぶりに誕生した女性騎手、深澤杏花さんの姿があった。
「小学4年生から乗馬クラブに通っていたので、馬に関わる仕事をしたいと思って騎手を目指したんです。でも、中学3年生で東関東馬事高等学院を受験したときは、もしダメだったらきっぱり諦めて、農業高校に入ってのんびり過ごそうって思ってました」。
取材当日、カジュアルなパーカー姿で現れた杏花さんは、そう言ってはにかむように笑った。
出身は兵庫県。2017年、千葉県にある東関東馬事高等学院の騎手コースに入学。翌年、難関の地方競馬の騎手課程に合格し、栃木県にある地方競馬教養センターで2年間、実科や座学を学び、厳しい訓練を積んだ。
地方競馬騎手免許を取得し、卒業と同時に実習で半年間滞在していた笠松競馬場の湯前調教師の厩舎に所属。2020年4月に騎手デビューを果たした。
初レースの結果は4着。「それまで4頭でしか走ったことがなくて、10頭のレースってどう乗ったらいいのか分からなくて。まわりも見えてなくて、変に外を走ったり。全然ダメでした」。一戦一戦に真剣勝負を重ねた36 戦目、一番人気だったプラピルーンに騎乗して、ようやく念願の1着を勝ち取ったときには思わず涙があふれた。
毎日、起床は深夜1時。2時から9 時頃まで所属する厩舎の馬に乗ってコースを走り、次のレースに向けて調教する。
その後の時間もトレーニングに費やし、月に4日の休日にも名古屋競馬場のトレーニングセンターへ赴き、調教を手伝って馬に乗ったりと、まさに馬づくめの日々だ。
「レースは自分で馬を動かすことができて、考えながら走って最後に一番になれるとすごく嬉しい。新人なのでまだ強い馬には乗れないんですが、人気のない馬もうまくまわして勝っていって、将来はリーディングジョッキー(最多勝利騎手)に入れる騎手になりたいです」。
勝つか、負けるか。プロとしてシビアな競馬の世界に果敢に挑む19歳。あどけなさが残る杏花さんの顔に、強い闘志がにじむ。
笠松競馬場
羽島郡笠松町若葉町12
TEL.058-387-3278
https://www.kasamatsu-keiba.com/
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