《TOFU magazine 旅する岐阜 11》/【海津市】カワイファーム
「TOFU magazine 11」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第11回は海津市を訪れました。
《旅する岐阜11 Kaizu》
手間を惜しまず育て
土蔵で熟成させる南濃みかん
養老山地の麓の斜面に広がるみかん畑。青々と葉を茂らせる樹々に、黄金色のみかんが見るもたわわに実っている。
「温州みかんはたくさん実がなる表年と不作の裏年を交互に繰り返すんです。今年は表年。だからこんなに豊作なんですよ」とカワイファームの川合聡さんが教えてくれた。畑では頰被りをした女性たちが、慣れた手つきで次々と果実を摘み取っている。
海津市南濃町は、岐阜県唯一のみかん産地。極早生(ごくわせ)みかんの収穫が始まる9月頃から、近隣の道の駅や農協が営む直売所に、コンテナに山盛りになった〝南濃みかん〞が並ぶ。
そもそも、全国でも北限の産地である南濃町でみかんが栽培されるようになったのは、明治初期に石津村(現・南濃町太田)の庄屋であった伊藤東太夫氏が、視察に訪れた和歌山県と南濃町の気象条件がよく似ていたことから、数百株の苗を移植したのが始まり。
「この辺りは養蚕が盛んだったんですが、桑畑がみかん畑に変わっていったそうです。昭和43年にみかんの大豊作で価格が暴落した後は、一時期、ブロイラーの養鶏を兼業する農家も増えましたが、その鶏糞を畑に持ち込んだおかげで地力が肥えました」。
川合さんは岐阜県農業大学校を卒業後、5代目として家業を継いだ。「親父から、有無を言わさず継げって言われてね。20歳からずっとみかん一筋で、もう38年」。
台風で老木が倒れたことや、寒さで低地の木が枯れたこともあった。それでも、新しい品種ができれば植え、有機肥料で樹々を育て、収穫前には天然成分でできた石灰硫黄合剤を散布し、手間を惜しまずみかん作りに挑んできた。
「収穫が終わって、春先にようやくほっとして、また1年が始まる。それの繰り返し」。そして「みかん作りには定年なんてないから辛いよね」と冗談めかして笑う。
温州みかんは収穫時期によって味も特徴も変わる。収穫が早い順から極早生、早生、中生(なかて)、晩生(おくて)と呼ばれ、11月から12月に収穫する晩生は甘みとともに酸味も増すため、土蔵で2カ月ほど貯蔵して熟成させた後、「蔵出しみかん」として出荷する。
50年以上前に建てられた土蔵には、積み上げられた1,080個もの木箱にみかんがぎっしりと並べられていた。
「ここで長期間熟成させることで、ほどよく酸味が抜け、甘みが残るんです。昔から〝南濃のみかんは酸っぱい〞と言われてきたけど、この蔵出しみかんの美味しさを知ってもらって、イメージを変えたい。そして〝やっぱり年明けは南濃みかんだよね〞って言われるようになったら嬉しいね」。
カワイファーム
海津市南濃町松山1727
TEL.0584-56-1366
***
「TOFU magazine」は、東京や岐阜を中心とした配布店舗にて入手いただけるほか、「岐阜ホール ONLINE STORE」でも、送料のみでご購入いただけます。(送料がお得な定期便もご利用いただけます。)
さかだちブックスをフォローする