【岐阜】今年も大盛況! 岐阜まち歌舞伎
伊奈波神社では、毎年4月4日に「岐阜まち歌舞伎」が上演されます。
岐阜は現在でも地歌舞伎が盛んな地域として知られています。岐阜町にもかつて芝居小屋がいくつかあり、岐阜祭りの前夜には町衆がにわか芝居などで盛り上げたのだそうです。当時のにぎわいを復活させたいと、岐阜町周辺の老舗の後継ぎが結成する岐阜町若旦那会が歌舞伎に挑戦。今年で7回目を数えます。
夕暮れが近づき続々とお客さんが集まります。
列はあっという間に会場の外にまで伸び、予定より10分ほど早く開場。
お弁当や岐阜町周辺のお菓子を詰め合わせ、オリジナルグッズが販売され、恒例の振る舞い酒も行われていました。
お客さん同士もお知り合いが多いようで、和気藹々。開場の空気は一気にあたたまりました。
開場して15分もするとあっという間に満席に。
急遽増席したり、立ち見のお客さんもいらっしゃいました。
司会の古田さん(ヱビス)によるアナウンスが入り、いよいよ開幕!
まずは長唄囃子の演奏。若旦那会のみなさんの真剣で凛々しい表情に、ざわざわとしていた開場も演奏が始まるとつられて緊張感が高まります。
初心者とは思えない本格的な演奏に幕開け早々圧倒されてしまいました!
お囃子の次は、鳳川伎連の幇間(男の芸者さん)の辰次さんによる舞踊の披露。
昨年は幇間見習いとして舞台に立たれていた辰次さんですが、1年間の間にめでたく幇間としてデビューされ、日本にたった8名しかいない貴重な存在となりました。
しなやかな出で立ちは何度見てもうっとりしてしまうほど美しいです。
続いて、同じく鳳川伎連の喜久次さんによる舞踊。
喜久次さんは、毎年若旦那会のみなさんの歌舞伎の振付・指導に尽力されています。
鵜匠さんが鵜を操る様子を表現した岐阜らしい舞いと、舞踊の前の巧みな話術で開場を魅了しました。さすがの貫禄です。
さて、すっかり観客のみなさんが舞台に惹きつけられたところで、いよいよお待ちかねの岐阜まち若旦那会による歌舞伎の舞台の幕が上がります!
今回の演目は『一条大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』。
源氏と平家の争いを一条大蔵長成卿を主人公として描いた人気の高い演目で、これまでで一番難易度が高いと言われています。
この日のためにお忙しいなかお稽古を重ねてきた若旦那のみなさんはどんな舞台を見せてくれるのでしょうか……!
幕が上がって早速登場したのは、特別出演のこのお二人。どなただかわかりますか……?
与一役の柳昇庵亨右衛門(りゅうしょうあんこうえもん)とお初役の燕屋八三津(つばめやはちみつ)。
どこかで聞いたことがある名前の響き……
そう、演じるのは柳商連理事長の林さんとツバメヤの岡田さん。
岐阜まち歌舞伎では実際のお名前や所属を文字った楽しいネーミングも見どころの一つです。
さすがご夫婦、息の合った掛け合いで、笑いを交えながら会場を惹きつけました!
そこへ登場したのは焙豆屋明右衛門(ほいとやあきえもん)演じる鬼次郎女房お京。
Yajima Coffeeの矢島さんはしなやかな女性の立ち居振る舞いを見事に演じます。
いつもならトレードマークの髭についてつっこまれる場面では、会場から笑いが起きました(笑)。
さて、場面は変わって主人公の一条大蔵卿が登場。
演じるのは、彩多屋喜十郎(さいだやきじゅうろう)こと伊奈波商會の金森さんです。
あまりのなりきりぶりに、本当は歌舞伎役者さんなのではないかと疑ってしまうほど!
大蔵卿は連日花見や能狂言に明け暮れる阿呆者。この日も伊奈波神社に「まち歌舞伎」見物に来ています。
そこで、お京を気に入り女狂言師として召し迎えるというストーリー。
お京の舞もお見事でした!
物語は展開していき、大蔵卿の女房である常盤御前が弓矢遊びに興じているのを、鬼次郎が懲らしめる場面。
常盤御前に扮するのは、旅客屋十八介(りょかくやそやすけ)こと、十八楼の伊藤さん、
鬼次郎は油屋佐太次(あぶらやさたんじ)こと、山本佐太郎商店の山本さんです。
いつも笑顔の山本さんもこの日ばかりはきりりとした凛々しい表情。
ここで、常盤御前が矢で射抜いていたのが敵方、平清盛の絵像だったことが明らかになります。
そこへ、陰で会話を聞いていた清盛の家臣、八剣勧解由(やつるぎかげゆ)の登場。演じるのは亀甲屋本舗の寺澤さんです。
勧解由と鬼次郎の立ち回りで物語もいよいよクライマックスへと向かいます!
刀さばきがかっこよくて見とれてしまいました。
勧解由は突如現れた薙刀で斬りつけられるのですが、その刀はなんと御簾の奥に潜んでいた大蔵卿が振り下ろしたもの。
大蔵卿は阿呆のふりをして、平家全盛の世の中を耐え忍んでいたのでした。
大蔵卿の衣装が早変わりする場面では、会場から色とりどりのおひねりと「彩多屋(さいだや)!」の掛け声が!
こうして、今年の岐阜まち歌舞伎も大盛況のうちに幕を閉じました。
最後は毎年恒例の納め唄「おばば」を会場も一体となって大合唱!
帰り道、お客さんの会話を聞いていると、
「来年はもっと早く来て席取らなくちゃね!」
「いやぁ、おもしろかった!」
と大満足の様子。
地元ネタ満載のコミカルなストーリーは老若男女みんなが笑顔になれる時間でした。
岐阜まち若旦那会のみなさん、今年も素晴らしい舞台をありがとうございました!
岐阜祭奉賛 岐阜まち歌舞伎
日時:2018年4月4日(火)18時30分開演
入場:無料
場所:伊奈波神社参集殿「稲葉座」
主催:岐阜まち若旦那会
一、長唄素囃子『雛鶴三番叟』
◇笛
小野崎隆賢
◇小鼓
市川蒼華之丞
◇小鼓
萬屋絵描衛門(NPO法人ORGAN 蒲勇介)
◇小鼓
指物屋匠之助(住工業 住公輔)
◇太鼓
恵比寿包之丞(ヱビス 古田浩紹)
◇太鼓
藤井進左衛門(藤井佛壇 藤居進一)
◇三味線
加藤恵子
◇三味線
両替屋十六十郎(十六銀行 田代達生)
◇三味線
杵屋喜鶴
◇三味線
杵屋喜朱雀
◇唄
喜久次
◇唄
達磨屋瓦楽(高橋製瓦 高橋秀太)
◇唄
加藤神威
二、舞踊「春霞伊奈波彌栄」
鳳川伎連 喜久次
鳳川伎連 辰次
三、口上
岐阜町若旦那会 会長
藤井進左衛門(藤井佛壇 藤居進一)
四、歌舞伎「一条大蔵譚」
原作 文耕堂・長谷川千四
改訂・補綴 ももたなむ
振付・指導 鳳川伎連 喜久次
配役
〜年番〜
一条大蔵長成|彩多屋喜十郎(伊奈波商會 金森正親)
八剣勧解由|亀甲屋隆之進(亀甲屋本舗 寺澤隆浩)
鬼次郎女房お京|焙豆屋明右衛門(Yajima Coffee 矢島明)
吉岡鬼次郎|油屋佐太次(山本佐太郎商店 山本慎一郎)
腰元 皐月|小森瑛未(岐阜小学校)
腰元 楓|矢島幸江(さっちん工房)
仕丁|淺野草平(NPO法人ORGAN)
仕丁|淺野雅樹(NPO法人ORGAN)
特別出演
与一|柳昇庵亨右衛門(宝玉会館 林亨一)
お初|燕屋八三津(ツバメヤ 岡田さや加)
常盤御前|旅客屋十八介(十八楼 伊藤豊邦)
五、納め唄「おばば」
平成30年度実行委員長 指物屋匠之助(住工業 住公輔)
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