《TOFU magazine 旅する岐阜 30》/【白川町】暮らすファーム Sunpo
「TOFU magazine 30」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第30回は白川町を訪れました。
《旅する岐阜30 Shirakawa 》
白川町黒川をフィールドに
有機農業で“暮らし”をつくる
畑にはナスやピーマン、トウモロコシ、スイカなどが青々と茂り、夏野菜の収穫はピークを迎えようとしていた。「あの田んぼは、参加者を募ってみんなで手植えをしたから、苗の植え方が歪んでるんだけど、それも愛嬌よね」。農園を案内しながら陽子さんが楽しそうに笑う。
加茂郡白川町の黒川地区に児嶋健さんと陽子さんが移り住んだのは、2012年のことだ。健さんは1年間、先輩農家のもとで化学肥料を一切使わない有機農業を学んで独立。夫婦で休耕地を借りてオーガニック農園の「暮らすファームSunpo」をスタートして、約10年が経つ。
現在は1丁3反の田畑で米や野菜、花など40種類ほどを育て、 山林で原木しいたけも栽培している。
さらに、陽子さんが野山で集めた植物で作るリースやしめ縄などを販売する花屋「道草Sunpo」、年に5回開催する小さなマーケット「Hygge Market(ヒュッゲマーケット)」、黒川地区を自然を遊び尽くすフィールドと捉え、木曽川の源流を辿るシャワークラ木曽川の源流を辿るシャワークライミングやバーベキューといった多様な体験を提供する「Sunpo Activity」も展開している。
「そもそも有機農業は、いろんな問題解決の手段の一つだと思っているんです」と健さん。
木曽川源流のきれいな水がつくられているこの中山間地で、環境にとって健全で持続可能な農業をすることや、地産地消で自給率を上げること。ここでしかできないアクティビティやキッズキャンプなどを通して、大人たちにも子どもにも農的な生き方に触れ、自然の中で生きる力を得る原体験をしてもらうこと。人と人をつなげていくこと。
「僕たちはここで、野菜というより、“暮らし”をつくっているんです」。隣で陽子さんが大きく頷く。2023年春には、農家が手がけるクラフトビール「農LAND BEER」の醸造も始まる予定だ。
とにかく自分たちが楽しいと思えるやり方で、面白い田舎をつくる。そして地域経済が活性化すれば、日本全体がもっと面白くなるはずだ。
「いろんな問題は山積みですけど、一緒にチャレンジする仲間も増えて、意外と未来は明るいんじゃないかって、そう思うんですよね」。
豊かな暮らし、とは一体何だろう。何に価値を見出すか、何をしあわせと感じるのか。
答えは、人それぞれかもしれない。けれども、この白川町黒川で大地に足を踏みしめ、時に厳しい自然や環境と折り合いをつけながら、作物を育み、社会とつながり、3人の子どもたちと日々を朗らかに過ごす健さんと陽子さんの暮らしに、その屈託のない笑顔に、一つの答えを見つけた気がする。
農園の敷地内に2年がかりで建てられた不定期オープンの店 「Sunpo Hygge」では、里山の植物で作るリースやスワッグ、 農園で採れた作物、調味料や雑貨などを販売。
暮らすファームSunpo
加茂郡白川町黒川2482-3
https://farm-sunpo.com/
Instgram:@farm_sunpo
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