世界最長!岐阜の伝統野菜「守口大根」の畑見学
各務原市旧川島町、木曽川の河川敷には「守口大根」の畑が広がっています。
岐阜、愛知の名物「守口漬け」に知られる守口大根は江戸時代から続く伝統野菜。
この日は12月2日開催したトークイベント「古来種野菜から考える、わたしたちの食のこと。」のゲストwarmerwarmerの高橋一也さんと、山本佐太郎商店さんにご一緒させていただき、守口大根の畑を見学させていただきました。
鮮やかな緑が美しい畑にたどり着くと、青々とした大根の葉のよい香り!
12月はちょうど守口大根の年に一度の収穫期で、土の中では元気に育った大根が収穫の時を待ちます。
生産者の高橋さんに守口大根の歴史についてお話を伺いました!
岐阜県史によると、江戸時代から栽培が始まった守口大根。最盛期には190人以上いた生産者さんも、現在では愛知県扶桑町に7名、岐阜では6名にまで激減し、今では大変貴重な存在となっています。
守口大根には第2次世界大戦によって国から食糧生産制限かかったときに、生産禁止となった過去があります。4、5年もの間 1本も生産してはならないという国からの指令でしたが、農家さんたちはそれでは自分たちの大切な大根が途絶えてしまうと、隠れて種を守り続けたのです。
最初は石川県の町家に正月飾りとして卸していたのだそう。12月に収穫できること、そして白と葉が豊かなことが縁起がよくぴったりだったのです! のちに、名古屋の町家にも農家さん自ら営業へ。守口漬けの漬け方までを伝え歩いたといいます。
「農家って利口なところもあるんだよね。自分たちの作物を守るためにひっそりと温存してきたんだ。努力してきたんだよね。収穫はえらいし(しんどいし)、儲らないからもうやめようかと思ったこともあったけど、そういうわけにはいかんと作り続けて50年。」と高橋さん。
通常の大根は春と秋、1年に2回収穫期が訪れますが、守口大根は1年に1度しか採れないため、手間はかかるけれど、それほど大量には生産することが難しいのだそうです。守口大根を奈良漬けのように漬けた「守口漬け」は高級品として現在でも贈答品に贈られますが、お歳暮やお中元の文化が衰退したことにより、生産量は激減。現在は13名の生産者さんが粛々と種を守り続けています。
お話を伺ったところで収穫を体験させていただきました!
腰を落とし、大根の首をしっかりとつかんで上下に力をかけると……
抜けた……!!
急にふっとやわらかくなる瞬間があって、するすると長い大根が顔を見せてくれました。
ちなみに、守口大根は世界最長の大根として2013年に扶桑町の農家が育てた191.7cmのものがギネス世界記録に登録されています。
払わなくても土が落ちるくらいサラサラとやわらかな土で、この土壌なくしては守口大根を育てることはできません。
昔は腰の深さほどまでスコップで土を掘って種まきをしていましたが、現在はごぼうの栽培に使われる機械を改良したものを利用して種まきと収穫を行なっています。
そして、なんと驚くべきことに、守口漬けは土がついたまま杉樽で塩漬けにするのだそうです!
食べてもじゃりじゃりせず、おいしくいただけます。
守口漬けは、浅漬けの3倍以上の塩で漬け1ヶ月半。そこか重石を軽くすることで、大根は85%の水を吸収して戻り、酒粕を使って塩を抜くという作業を4〜5回繰り返し、最後にみりん粕を加え、全部で2年間の月日をかけて出来上がります。
高橋さんは「塩分、水分を吸収するのは大根が生きているということですね。」と、教えてくださいました。
早速、シャクっとひとかじり。採れたてのみずみずしい大根は、何もつけなくても味が濃いのでサラダにしてもおいしそう!
太めのものはおでんにしたり、大根の葉はふりかけにして食べることもできます。
種を守るために現在は生での流通はしておらず、ほとんど全ての大根がJAで漬物にしてから出荷されるので、今回生でいただいたのは非常に貴重な経験でした。
岐阜の守口大根の生産者さんの中では、高橋さんが最年長。昨年は8名いた生産者さんも、今年は6名になり、後継ぎの問題がもっとも深刻になっています。
高橋さんは「農家は次の世代が野菜をつくっていくことができる環境をつくらなくてはいけない。農協がやってくれると思っていてはダメで、自分たちでいろんな情報を取り入れて前に進んでいかねばならない。農家どうしで身を寄せ合って生きていくのではなく、異業種との交流も増やしていきたいと思っています。」とこれからのことを力強く語ります。
伝統野菜を守るためにわたしたちができることは1日1品でも食卓に伝統野菜を並べること。
守口漬けは岐阜市則武の丸高守口漬け本店でお買い求めいただけますので、ぜひ食べてみてください!
丸高守口漬本店
住 所:岐阜市則武中3-21-11
営業時間:8時~18時
定 休 日:日曜・祝日
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