【岐阜市】岐阜祭奉賛 第12回岐阜まち歌舞伎
2025年4月2日(水)に、岐阜市の伊奈波神社参集殿で「岐阜祭奉賛 第12回岐阜まち歌舞伎」が開催されました!
かつて、伊奈波神社の境内には芝居小屋があり、地域に歌舞伎の文化が根付いていました。岐阜祭前夜には、町衆によるにわか芝居(いわゆる素人による即興芝居)が上演されて盛り上がったといわれています。そんな歴史的背景から、2012年より岐阜町若旦那会が「もう一度歌舞伎で地域を盛り上げよう」と「岐阜まち歌舞伎」を主催。今年で12回目の奉納となりました!
*過去の岐阜まち歌舞伎の記事はこちら



開演の少し前に会場に着くと、客席はすでにほぼ満席!今年は幕間も楽しめるようにと、天ころりんさんの天結びや、亀甲屋本舗さんのうかい鮎、山本佐太郎商店さんの3じのビスケット、伊奈波商會さんの長良川サイダーといった、若旦那会メンバーや演者が営むお店の飲食も販売されていました。

受付では、プログラムや演者、歌舞伎のあらすじが載ったパンフレットがもらえるので、歌舞伎初心者の方も安心して観劇できます。
そして、岐阜まち歌舞伎の楽しみの一つといえば、演者に向かって投げる「おひねり」!パンフレットと一緒に色紙がついているので、硬貨を包んで準備します。


今年はさらに「地芝居印帳2025」もいただきました!岐阜県内各地の地歌舞伎の公演日程が掲載されていて、各公演会場で配布される“地芝居札”を御朱印のようにコレクションできます。もちろん、岐阜まち歌舞伎の札を手に入れましたよ!
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そして、18時半になるといよいよ開演!

チョン、チョン、チョン……という拍子木を打つ音を合図に、「ヨーッ」という掛け声や笛や太鼓の音が響き、善光寺安乗院の松枝秀乗さんがまずは口上(あいさつと演目紹介)を述べます。

最初の演目は、御祝儀長唄素囃子「志賀山三番叟(しがやまさんばそう)」。岐阜町若旦那会、岐阜歌舞伎保存会のメンバーに加えて、「清流の国ぎふ」文化祭2024で一緒に歌舞伎を披露したという岐南町の伏屋獅子舞保存会ともコラボしての演奏です。太鼓、笛、三味線の息のあった演奏に、今年も岐阜まち歌舞伎が始まった、という気持ちが高まります!

続いては舞踊長唄「藤娘」。こちらの演目では「岐阜町お囃子教室」に通う地元の子どもたちが登場!
そして、藤の枝を手に持ち現れたのは、舞妓の鳳川伎連(ほうせんぎれん) 喜久有さんです!
着物や髪飾り、扇、笠にも藤の花が咲いた、まさに藤尽くしの可憐な姿。子どもたちのお囃子に合わせて優雅に舞う姿に、観客はうっとり見入ります。
自分の演奏に合わせて舞妓さんが踊るのはとても名誉なことだそうで、子どもたちがそんな貴重な経験ができるのも、この地域で岐阜まち歌舞伎と花街文化が続いているからこそですね。
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そして、いよいよ歌舞伎の舞台が開幕!演目は、お能の「小鍛冶(こかじ)」という題材を脚色した「神掛誉相槌(かみかけてほまれのあいづち)」です。

今年は舞台の右側に地方(じかた)と呼ばれる演奏者が並び、生で歌舞伎に音をつけるという演出も。舞台の迫力がいっそう増します!

最初に現れたのは、勅使(ちょくし)の橘道成(たちばなのみちなり)を演じる湊屋明徳(ホテルパーク:山岡明徳さん)。物語の始まりは、一条天皇が「刀鍛冶の名人、三絛小鍛冶宗近に剣を打たせよ」と不思議な夢のお告げを受け、道成がその勅命を三絛小鍛冶宗近(むねちか)を演じる恵比寿包之丞(ヱビス:古田浩紹さん)に伝えに向かうところから始まります。
突然の勅命に宗近は驚きますが、天皇の命令を断るわけにはいきません。しかし、剣を打つには自分と同等の腕の相棒が必要で、宗近の周りにそのような人はいません。そこで、「かような一大事、神仏に頼るほかなし」と、宗近は氏神である稲荷明神に助けを求め、神社にお参りします。

道成が退場するシーンでは、しっかりホテルパークの宣伝もして、観客の笑いを誘います!こうした“地元ネタ”がたくさん散りばめられているのも、岐阜まち歌舞伎の醍醐味。「湊屋ッ!」と大向こう(掛け声)も飛び交います!
稲荷神社に辿りついた宗近は懸命に祈りを捧げます。と、そこに現れたのは…
明神眷属(けんぞく)の小狐を演じる亀甲屋和季(寺澤和季くん)!なんとも可愛らしい小狐の姿に、客席から歓声が湧きます!
お祈りする宗近の周りをくるくると駆ける小狐。すると、もくもくとスモークが焚かれ…
童子を演じる亀甲屋隆之進(亀甲屋本舗:寺澤隆浩さん)が現れました!
宗近の祈りを聞いた童子は、昔の名剣にまつわる物語を伝えて宗近を励まし、自分が協力することを約束。小狐と共にスモークの中に消えていきます。
ちなみに、小狐と童子を演じる二人は、本物の親子!ということで、微笑ましい共演に観客はあたたかい拍手を送りました。

場面が変わり、今度は宗近下女である若葉を演じる山埜屋焚左衛門(埜(の)となれ山となれ:安田尚央さん)が登場。しなやかな立ち姿や女方らしい声色の出し方が、さまになっています!鍛冶の準備のために鯛を求めますが、時化(しけ)で釣れないということで困り果てた様子。

そこに現れたのが、福丸屋主人の弘兵衛を演じる福丸屋太伊之介(薄皮たい焼き福丸:森弘明さん)。“鯛を商う者”として、困っている若葉を助けようと「目の下一尺なる鯛(真鯛)」を拵(こしら)えることを約束しますが…
弘兵衛が拵えたのは、もちろん(?)本物の鯛ではなくあんこがたっぷり入った「たい焼き」!思っていた鯛と違うことに、はたまた困る若葉。そこで登場するのは、戎神(えびすしん)を演じる恵比寿昊暉(古田昊暉くん)です!
若葉の信心深さを称えて、戎神は自分が手に持った“鯛“と“たい焼き”を交換することを提案。こうして若葉は無事に鯛を手に入れたのでした。
そして、物語もいよいよ終盤!鍛冶の段取りを整えた宗近が、鍛冶場で祝詞を唱えると…

氏神の稲荷明神を演じる亀甲屋隆之進が現れます!実は、稲荷神社で登場した童子は、稲荷明神の化身だったのです!ボリュームのある白髪姿に、白い着物をまとった稲荷明神、とっても迫力があります!
そして、「私が相槌を務めましょう」と稲荷明神が告げると、今回の見せ場である二人で槌(つち)を打ち合うシーンに!
息をしっかりと合わせて、リズミカルに剣を叩く二人。地方の奏でる笛や鼓、三味線の音が会場に響き、剣を打つ様子をいっそう盛り上げます。さらに立ち位置を変え、剣を鍛えると、見事、名刀「小狐丸」が誕生!
最後に宗近は、完成した小狐丸を道成のもとに納め、めでたし、めでたし!宗近と道成のポーズも決まり、舞台は幕を閉じました。
フィナーレは恒例のおさめ唄「おばば」を観客も一緒になって唄い、三本締め。今年の岐阜まち歌舞伎の演目は全て終了となりました!
いやあ、今年も面白かった!!

生演奏やスモークの演出、子どもたちの活躍と、今年も見応えたっぷりだった岐阜まち歌舞伎。面白い舞台を見せていただいた岐阜町若旦那会や演者のみなさん、ありがとうございました!毎年進化する舞台を、また来年も見られることを楽しみにしています!
【終了しました】第12回 岐阜まち歌舞伎
開催日:2025年4月2日
時間:18:00(開場)18:30(開演)
会場:伊奈波神社参集殿 稲葉座
入場:無料(予約不要)
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