【岐阜市】岐阜祭奉賛 第10回岐阜まち歌舞伎

2023年4月4日(火)に「岐阜まち歌舞伎」が伊奈波神社参集殿で開催されました!

岐阜まち歌舞伎とは“江戸時代に伊奈波神社の境内に芝居小屋があり、地域に歌舞伎の文化が根付いていた”という歴史的背景から、岐阜町若旦那会が「もう一度歌舞伎で地域を盛り上げよう」と2012年に始まった企画です。(過去の岐阜まち歌舞伎の記事はこちら

岐阜祭の宵宮を飾る舞台として、毎年決まって4月4日に上演し続けていましたが、コロナ禍で上演を中止・縮小せざるを得なくなり、伊奈波神社参集殿で開催されるのは実に4年ぶりのこと。

会場では久しぶりの開催を心待ちにしていた地域のお客さんが、開場前から長い長い列をつくっていました!

開場すると若旦那会のメンバーが入り口に立ち、お客さんを歓迎!

歌舞伎を演じるのも、裏方として舞台を支えるスタッフも、関わる方々はみんな岐阜町若旦那会のメンバーを中心とする地元民というだけあって、岐阜まち歌舞伎は上演が始まって以来、ずっと地域に愛されてきました。開演までの間もお客さんが「楽しみだね」「がんばってね」などと口々にメンバーに声を掛け、会場には終始あたたかい雰囲気と高揚感が漂っていました。

前方が座敷席、後方が椅子席で、およそ300席ある客席はあっという間に埋まっていき、コロナ前と変わらぬ盛況ぶり!最終的には立ち見が出るほどの賑わいとなりました。

歌舞伎というと高尚な文化で敷居が高く、馴染みのない方も多いかもしれませんが、まち歌舞伎はストーリーがわかりやすく、出演者が地域の方々にとって身近な人ということで、小さなお子さんからご年配の方まで幅広く楽しめるのが魅力です。

ずらりと並ぶ協賛者の提灯の中に「さかだちブックス」の提灯を発見!

チョン、チョン、チョン………幕開けを知らせる拍子木が鳴り、いよいよ10回目の節目となる岐阜まち歌舞伎の開演です!

岐阜町若旦那会会長のヱビス 古田浩紹さんの口上(あいさつと演目紹介)の後、公務の合間を縫って観覧に訪れた柴橋正直岐阜市長からも激励が送られました。

そして、幕前演奏として、若旦那会と岐阜町の子どもたちによるお囃子の披露からスタート。

もともと若旦那会のメンバーがまち歌舞伎とともに始めた素囃子の演奏が、10年の間にメンバーの子どもたちに受け継がれ、今年から「岐阜町子どもお囃子教室」が発足。教室では地域の小中学生がお囃子の演奏や礼儀作法を学んでいます。

凛々しい顔つきで演奏する姿に、会場からはあたたかい拍手が送られました!

続いては、鳳川伎連(ほうせんぎれん)の幇間(ほうかん)の喜久次さんと辰次さん、そして今年3月に舞妓として見世出し(デビュー)をしたばかりの喜久有さんが「春霞伊奈伊彌榮(はるがすみいなばのいやさか)」を披露。短い時間ながら、圧巻の美しい舞踊に観客は釘付け。会場の熱気も一気に高まります!

5月から始まる長良川鵜飼も、今年はコロナによる制限はなく、船上お座敷遊びを楽しめるとのことなので、鳳川伎連さんの華麗な舞を鵜飼観覧とともにお楽しみくださいね。

さあ、いよいよ今年のまち歌舞伎「新装恋墨塗(かきかえてこいのすみぬり)」の幕開けです!

明治時代に初演された狂言「墨塗」を舞踊劇に改めた「墨塗女」をさらに補綴した台本で、笑いありの和やかなストーリーに、現代の岐阜の地元ネタをパロディとして織り交ぜた岐阜まち歌舞伎ならではの作品。

まずは大名福徳万之丞演じる、東鶴屋大三郎(とうかくやだいざぶろう)こと橋爪大さんの登場。190センチ超えの高身長の橋爪さん、堂々たる立ち居振る舞いで、さすが舞台上でも迫力があります。ストーリーは幕府の重役に任じられ、京都へ上ることとなった万之丞が、恋仲となった花乃姫の屋敷を訪れるところから始まります。

万之丞のお供をするのは、太郎冠者に扮する、土研屋教右衛門(どけんやおしえもん)こと岐阜大学の出村嘉史先生。そして、花乃姫の屋敷で二人を出迎えるのが、醸志屋麦汁郎(かもしやばくじゅうろう)こと岐阜麦酒醸造の平塚悟さんと、萬屋絵描衛門(よろずやでざえもん)ことNPO法人ORGANの蒲勇介さんです。

「土木専攻の大学教授→土研屋教右衛門」「ビール醸造所のブリュワー→醸志屋麦汁郎」「地域のデザイナー→萬屋絵描衛門」と、名前を見るだけでも、それぞれの普段の職業が見事に取り入れられていて、くすりと笑えます。

会場からも「土研屋ー!」などと威勢のよい合いの手が飛び交って舞台を盛り上げます!

続いて、主役の花乃姫を演じる、藤井進左衛門こと藤井仏壇の藤居進一さんが、煌びやかな衣装で登場!

すっかり女形が板についた、しなやかな仕草や台詞の話し方は、素人とは思えません…!

美しい花乃姫ですが、実は言い寄ってくる男たちを手玉に取ろうという魂胆を隠していて、万之丞も最初は別れを惜しむ花乃姫に騙されてしまいます。

ストーリーが進む中、岐阜のまちならではのパロディも盛りだくさん!

最近、伊奈波神社にオープンしたばかりの「天ころりん」さんの天むすを会場のお客さんに投げて振る舞うシーンも。お客さんは突然の嬉しいサプライズに、なんとか天むすをキャッチしようと手を伸ばします…!

醸志屋麦汁郎を演じる平塚さんは、岐阜麦酒を持ってしっかりと撮影のサービスタイムを(笑)。

さらに蒲さんが和傘を使った舞を披露すると、会場からはたくさんのおひねりが…!

会場の空気はどんどん温まり、いよいよストーリーは佳境に向かっていきます。

万之丞との別れを惜しむ涙を流していた花乃姫が、実は茶碗の水で頬を濡らして泣いたふりをしていたということに気がついた太郎冠者は、そのことを万之丞に伝えるも、花乃姫を愛する万之丞は「そんなことはあるまい」と一向に信じようとはしません。

仕方なく太郎冠者は茶碗の水に墨を流し入れ…

花乃姫の偽の涙は墨で真っ黒に…!

花乃姫は太郎冠者の仕業だと気がついて腹を立てますが、愛想をつかした万之丞たちはみな姫の元を去ってしまいます。

しかし、最後は花乃姫が気がかりな万之丞が戻ってきて…花乃姫の頬を真っ黒にした墨は本当の涙で流され、舞台は和やかな空気で幕を閉じました。

興奮冷めやらぬまま、最後は恒例のおさめ唄「おばば」を会場一体となって大合唱!

今年の座長を務めたカンダまちおこしの田代達生さんから「色々な伝統芸能の保存の仕方がありますが、わたしたちはこうした形で地域の文化をこれからも守っていきたいと思います。本日はお越しいただきありがとうございました!」とお礼の言葉が述べられました。

4年ぶり、そして10回目ということで、出演されたのみなさんにとっても、毎年楽しみにされている地域の方々にとっても特に印象深い舞台となった、今年の岐阜まち歌舞伎。

岐阜町若旦那会のみなさん本当にお疲れ様でした!そして、素敵な舞台をありがとうございました!

来年もまた4月4日にこの時間を過ごせることが楽しみですね。


第10回 岐阜まち歌舞伎

開催日:2023年4月4日

時間:18:00(開場)18:30(開演)

会場:伊奈波神社参集殿 稲葉座

入場:無料(予約不要)

2023年04月09日作成
関連記事