【土岐】SAKUZAN/さかだち社会見学

岐阜県東濃地方は全国の陶磁器生産量のおよそ半数を占める「美濃焼」の生産地です。

東濃地方のなかでも特に焼き物が盛んな土岐市駄知町に工房を構える窯元「SAKUZAN」さんでは、伝統工芸品である美濃焼に現代的なデザインを取り入れたものづくりをされています。

「かつては800軒近くあった窯元も現在では半数以下になり、その7割以上は1〜5人の少人数なんです。だから20人規模のわたしたちのところは人数が多いねと言われるくらいなんですよ。」と穏やかな表情で話してくださったのは、代表の高井さん。

高井さんは窯元の3代目。若い頃はもともと家業を継ぐ気はなかったそうですが、お父さんが体調を崩されたことをきっかけに、勤め先であったプランニング会社を24歳に退社し、帰郷しました。戻ってきたからにはと、後継ぎになることを決意し1987年、「山作」という祖父の屋号を一新し、「作山窯」として会社を立ち上げました。

古くから続く伝統産業を会社の事業として新しく起こすというのはなかなか厳しいもの。最初の1、2年は見よう見まねで高井さんご自身が陶器づくりを覚えるところからはじめるも、土の仕入れ業者さんから材料の土を売ってもらえないこともあったそうです。

 

つくっても売れないという時期を乗り越え、3年目くらいからだんだんと商品になるものをつくることができる手の感覚を覚え始めたという高井さん。

かっこいいものやかわいいものが売れるというわけではありません。

SAKUZANさんが大切にしているのは、「作家性」と「実用性」とのバランス。

あくまでも「作家」ではなく「職人」でありたいという高井さんは、毎日使えるということを前提に「雑器」ではなく「食器」をつくることにこだわります。

「陶器市ですごくいいなと思う皿に出会えたとしても、家に持ち帰ったらなんだか使いにくくて結局しまいこんでしまうなんてことありますよね。それは食器じゃなくて雑器だと思うんです。」

たしかに、食器に限らずとも見た目は気に入ったのに使い勝手が悪いという経験をされたことがある方は多いはず。

 

SAKUZANさんの商品デザインを担当するのは全て高井さんご自身です。デザインするときに大切にしていることはその食器が使われるシーンを思い浮かべ、「空間」からデザインするという感覚。ショールームのテーブルの上にはシリーズごとにそれぞれの世界観ができあがっていました。

「食器は料理が盛られてはじめて完成するんです。食器だけなら50%くらいまでしかつくれないんですよね。だから、料理と器の助け合いが大切でそのときに器が勝ってしまわないように“間”の取り方をすごく考えます。」

 

食器をデザインする時に心がけているのは常に素直に物を見ること。

陶器のデザインは無意識に入ってきてしまわないよう、なるべく見ないようにしていると言います。

ショールームでSAKUZANさんの陶器に実際に触れたところで、工房を見学させていただきました。

 

こちらは仕入れた土を練る機械。

通常、陶器の窯元ではそれぞれ決まった2、3種類の土と釉薬を使いますが、SAKUZANさんでは10種類以上もの土と100種類もの釉薬を組み合わせて多種多様な風合いや色味を実現させています。

高井さんでも何種類の食器をつくってきたかわからないというほど「少量多品種」にこだわり常に新しい提案する姿勢を大切にされています。

工房では15名ほどの職人さんが分業制で作業されていました。

窯元というと力仕事や寒さなど環境が厳しいことから必然的に男性が多い一方で、ここでは女性の方が多いのが特徴。

特に4年ほど前にブランディングをしてからは一度社会に出た方が、ここで働きたい! と転職されることも少なくありません。

 

工房での作業は驚くほどに全て手作業……!

機械では出ることのない、自然のものの風合いや色の違い、焼きムラなどもあえて出すようにしています。

「これから窯元はどんどん数が少なくなっていくだろうし、継いでもらうことを望んでいない窯元さんもたくさんいます。地場産業として、自分のところの窯元だけが残っていけばいいというものではないし、窯元が減ると土の仕入れ業者さんや釉薬屋さんもやっていけなくなって、その結果つくれるものは狭まってしまう。地場のものを残していくために流通を一気に変えることは難しいけれど、じわじわ変えていくしかないですね。」と高井さん。

 

最近では器の枠を超えて美濃焼の可能性を広げるべく、MANONという新しいブランドもプロデュースされています。

「伝統は守るべきだ」という意識が強い陶器業界では特別なことをやっていると思われてしまうこともしばしば。でも、伝統産業を残していくためには、新しく仕掛けていくことが大切で、それが結果的に今あるものを守ることにつながるということが伝わってきました。

美濃焼や陶器に限らず、伝統産業や地場産業のこれからに広く通じるようなSAKUZANさんのものづくりの姿勢。今後の活躍にも目が離せません。


作山窯/SAKUZAN

住所:岐阜県土岐市駄知町1369-3

HP:http://www.sakuzan.co.jp/

 

 

 

2018年03月24日作成
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