【INTERVIEW】YAJIMA COFFEE
「YAJIMA COFFEE」さんがお店を構えるのは、岐阜市金華山の麓。
大きな窓が、岐阜城のそびえる金華山の頂上と広い空を切り取ります。
お店のオープン前にも関わらず、店主の矢島さんが丁寧にコーヒーを淹れてくださいました。店内によい香りが広がるなか、矢島さんにお店を営むことへの想いや岐阜のまちについてお話を伺いました。
きっかけは、大好きなコーヒー屋さんとの出会い
杉田:まず、お店を始めるにいたったきっかけやその想いを教えてください。
矢島:最初に就いた仕事を辞めようと考えていた時に、奥さんと出会って、よく2人で名古屋のコーヒー屋さんに通っていました。そこが大好きで、仕事を辞めて何をしようかと考えた時に、このコーヒー屋さんのようになりたいと思って。それで、岐阜のコーヒー屋さんでアルバイトとして下積みを始めたんです。4年間ほどそこで働いて、やっと生まれ育った地元岐阜で独立できると思い、物件探しから始めました。
杉田:それまでは、コーヒーの勉強をされていたわけではなかったのですね。会社を辞められて新しいことに挑戦するのは勇気がいることですよね…
矢島:そうそう。お金も経験もなかったので、下積みから働かないといけないなと思って。要は、自分たちの人生のターニングポイントとなる話をしていた場所が大好きな空間で、そのお店のようになりたいなと思ったのがきっかけですね。
杉田:今のお店の空間にも好きだったコーヒー屋さんの名残はありますか?
矢島:それはないかもしれない。僕が好きだったのお店というのは人なんですよね。マスターがすごく好きで。客観的に見てもすごくいいお店だと思うんですけど、それってやっぱり人だなと思っています。
杉田:ずっと通われていたんですか?
矢島:そうそう。結構通っていて、マスターは僕にとって憧れの人です。まだまだ少ないけど努力をして、独立できて、今4年目に入ったのですが、それなりに認知され始めて、色々コーヒーのこともわかってきて。やっと憧れのお店の人と、フラットに話せるんですよ!
杉田:それは夢のようなことですね!
矢島:そうなんですよ。憧れのマスターと一緒にネパールの農園にコーヒーの買い付けに行ったんです。本当に恵まれているというか、努力したかいがあったと思います。でも、僕なんて周りに比べたらすごい短いからまだまだなんですけどね。この業界に入って、努力したことが少しずつ実ってきているなと思います。
幅広いお客さんに、本当の意味での自分のコーヒーを
杉田:お店を始められて4年目ということですが、大切にしていることを教えてください。
矢島:僕が下積みを積んだ自家焙煎の喫茶店は、おそらく岐阜で自家焙煎をやっているお店の中では一番多くお豆の種類を扱っていて、とてもすごいと思うんです。だけど、喫茶店なんですよ。コーヒー屋ではないんです。お店に行って、ブラジル、エチオピア、コロンビア…何にしようかなというのではなく、ホットとモーニングみたいな感じです。お客さんの層もすごくフラットで。モーニングは1日で150人くらいをハンドドリップで回すんです。
杉田:モーニングって4時間くらいの間に150人ってすごい回転数ではないですか?
矢島:そうなんです。しかもハンドドリップで。コーヒー好きの尖った人とかではなくて、おじいちゃんおばあちゃんが多いんです。そういう空間が僕はいいと思っていて、だから、お店は僕たちの趣味が出てはいますが、幅広く来てもらえるようなお店づくりをしたくて。多分下積みをしていたお店にそういう考えがあるからですね。
杉田:そういうお話を聞くと安心します。私もコーヒーはとても好きですが、詳しいことはよくわからないし、メニューにたくさん種類があってもどれを選べば良いのかわからなくなってしまうんです。
「本日のコーヒー」がいわゆる「ホット」のこと。その他のメニューにも、香りと味の説明がついている。
矢島:そういう方のためにうちはメニューに「本日のコーヒー」を用意しています。コーヒー専門店のなかにはないところもありますが、それはお客様にやさしくないのではないかと思います。そういうふうに、どなたでも受け入れられる空間にしています。でも、来ていただいたからには、満足した時間を提供したいとは思っているので、小さいお子様のグループは場合によっては断ることもあるかもしれない。家族は全然うるさくても気にしないんですけどね。それがお店の空間的な考えです。
焙煎前のコーヒー豆。矢島さんの1日は早朝4時からの焙煎に始まる。1日に焙煎するのは2〜3種類。
杉田:コーヒーへのこだわりはどのようなところにありますか?
矢島:コーヒー豆はグリンピースのような生豆の状態で船に乗って運ばれて来ます。焙煎する前は青臭いんですよ。これは商社さんから買うわけですが、輸入する商社さんの豆の種類のリストがあってその中からサンプルで少量取り寄せて味で見て選びます。そこから自分の目利きというか、自分の運命が決まります。生豆で来て、焙煎して、茶色の豆になって、それをミルでひいて、お湯でドリップで落として、この液体になります。その工程を全部やりたくて。全部と言っても育てるのはさすがにできませんが。例えば、お客さんが最後まで飲みきっておいしいと思ってもらえれば気にしなくていいんですけど、残して何も言わずに帰られるお客様って、なんで残したんだろうと思うじゃないですか。それを色々追求して行くわけです。大きいところだと、焙煎する人、生豆を目利きで見る人、仕入れる人、ドリップする人、提供する人…分担制になってしまいます。でも、その責任を全部持てるというのはすごく重要だと思っていて、全てに責任を持つことで、自分を良い意味でプレッシャーにかけるというか、全ての工程でおいしく出そうと思わないとおいしいコーヒーは出せない。
杉田:もしバラバラだったら、どこにお客さんが残した原因があるかわからなくなってしまうということですね。
矢島:そういうことです。この規模だからできるんですけど。本当の意味で自分のコーヒーを出したいんです。だから全ての工程で自分がやらないと気がすまない。おいしかったら良いけど、お客様が残した時に反省して次に生かさないといけないし。それが自分のなかで一番大事です。
岐阜町若旦那会の一員として
杉田:最後にお店やまちが今後こうなっていったらいいなという展望を教えてください。
矢島:若旦那会ですね。若旦那会は「岐阜町」と呼ばれる地域のお店の若旦那の集まりで、メンバーが増えて、今変わろうとしています。お店のことはもちろん、お店のある街もさらに魅力的にしていかなくてはいけない。お店を休んで若旦那会に参加しないといけないこともある。でも、それは数日であればあってもよいと思っています。街がよくなればお店もよくなるじゃないですか。だから、この街をさらに魅力ある街にしていくことは大切だと思います。
杉田:岐阜町は住所にはない地域ですよね?
矢島:岐阜の城下町ということで、かつては「岐阜町」と呼ばれていたそうです。ここ岐阜町には、金華山、岐阜城、長良川、鵜飼、お寺、神社など岐阜の歴史ある魅力的なスポットが詰まっています。だからそのプレッシャーもあるんです。今ももちろんよい街なのですが、岐阜町若旦那会が頑張れば、もっと魅力的になっていくと思います。
杉田:岐阜町の今後が楽しみです! 矢島さん、ありがとうございました。
YAJIMA COFFEE
住所:岐阜県岐阜市大宮町1-8
営業時間:11時〜18時(L.O. 17時30分)
定休日:火曜日
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