【INTERVIEW】徒然舎

岐阜市のまちの古本屋「徒然舎」さんは、岐阜市柳ケ瀬商店街の東側、美殿町商店街にお店を構えます。

店主の深谷さんに古本屋を営むことへの想いや岐阜のまちのことについてお話を伺いました。

インターネットから一箱古本市、そして実店舗へ

杉田:まず、お店を始められたきっかけやその想いを教えてください。

深谷:2008年の春に、9年間勤めた会社を辞めて、改めて自分のやりたいことを考えました。その時に、ずっと本が好きだったので、本に携わる仕事に就こうと思ったんです。どちらかというと、作り手側より、お客さんに手渡す側の方が好きで、学生時代は図書館の司書資格を取りましたし、図書館やまちの書店でアルバイトもしていました。

ちょうどその頃、インターネット古本屋や一箱古本市が盛り上がってきて、初めはそういったかたちで古本屋を始めました。当初は、実店舗を持つことは考えていませんでしたが、一箱古本市で対面販売をしてみたら結構楽しくて。でも、イベントなので、そこでお客さんと気が合って、「お店どこなんですか?」と聞かれても「いや、ないんです。」と答えるのを心苦しく思っていました。

また、インターネットだと、小さなお店も大きなお店も同じところで、要するに値段で比べられてしまうんですよね。amazonで100円で売っているのなら、自分が100円より高く売ったら、お客さんはamazonで買うじゃないですか。だから戦えないというか。

杉田:そうですよね、値段以外に比べられるところがほとんどないですもんね。

深谷:そうそう。あえてここで買うというのを打ち出すのが難しいんです。それで、色々考えたら、店を構えればそういうことに縛られなくてよくなるし、ずっと来てくれるようなお客さんにも会えるし、いいなと思って。2010年の秋くらいにようやくお店をやってみたいなと思うようになりました。

物件が見つかったのが2011年の初めで。ここではなくて前のお店(注:今のお店から5分ほど東の殿町で2014年夏まで営業されていました)なんですけど。そこでやろうと決めました。

最初から古本屋をやろうと思って動いてきたわけではなくて、流されるままに始まったんです。

杉田:でも、流されたと言われるわりには、会社を辞められてから古本屋のお仕事を始めるまで1年あまりと、だいぶハイスピードですね。

深谷:そうなんですよね。でも、自然な流れのなかでここまできたんですよ。そのときそのときは考えているんですけど(笑)

杉田:会社を辞められてからも愛知に戻ろうということは考えなかったのですか?

深谷:店を構えることを知った古本屋の先輩や友人からは、岐阜じゃなくて名古屋の方がいいんじゃないかとよく言われました。でも、なんとなく岐阜がいいなと思ったんです。

出身は愛知県ですが、学生時代は京都だったからあまり名古屋で遊んだ経験がなく、愛知よりも岐阜のまちの方が自分に近い感じがしたんですよ。

あと、自分が会社員時代に、疲れた時ふらっと立ち寄れるお店が少なかったのが残念だったので、岐阜のまちに、本好きの人が心安らげる場所をつくりたいという思いも強くありました。

「誠実」がモットー

杉田:お店で大切にしていることやコンセプトはありますか?

深谷:「誠実」がモットーです。

まずは本に対して誠実。それは扱い方—丁寧に扱うとか、むやみに安売りしないとか。買取をするときは、これがよいものなのか、欲しい人がいるのかということをしっかり踏まえて査定します。本を店に並べる時も、本の流れや見せ方など色々考えながら並べています。そういう意味で本に対して誠実であろうと思っています。

また、もちろんお客様に対して、常に誠実に接していたいという気持ちがあります。

そして、自分に対して誠実というのもあって。世の中では当たり前とされていても自分はやりたくないと思うことはやらないとか、自分がこうするのがいちばんいいと思えることは絶対にやろうとか、自分が正しいと思うことを誠実にやっていくとか。そういうことを総合して「誠実」をモットーにやっています。

古本の世界への入り口に

杉田:私は、初めて徒然舎さんに来た時に、本の状態やセレクトから「ここ古本屋さんだっけ?」と思うような感覚がありました。本のセレクトはどのようにされていますか?

深谷:そういうふうに思ってもらいたいと思って店をつくっているところはあります。「昔ながらの古本屋さん」というイメージは、ちょっと埃っぽくて、日に焼けた本が並んでいて、ずらーっと上の方まで本があって、ちょっと気難しそうな店主がいて、シーンとしていて…という感じかなと思うんですが…

杉田:一見さんお断りのような印象がありますよね。

深谷:そうそう、実は私も怖いときがあります(笑)だから、お客さんが古本屋に気軽には入りにくいのはすごくわかります。

でも、古本の世界って本当に奥深くて面白いので、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。だから、これまで古本屋に足を踏み入れたことがないような若い人とか女性でも入りやすいようなお店にしたいと思っています。

ただ、新刊のような本が安いだけの店ではつまらないので、深みや奥行きのある本棚をつくるようにしています。今は入り口付近に新刊本が少しだけあって、店の奥に行くとだんだん濃い古本になっていくような感じに本を並べています。

杉田:自然な流れで古本へ向かっていますよね。

深谷:それが伝わっていたら嬉しいです。

杉田:間違った解釈でなくてよかったです。

わたしは本が好きなので、岐阜は本屋さんがあるまちだということがわかって安心して岐阜に引っ越してきました。新刊スペースに置いてある本も、大型書店には並んでいないような本じゃないですか、そういうのを実際に手に取れる場所があってよかったなと。

深谷:まさにそう思ってもらいたくてやっているのでよかった!

杉田:新刊についてはどうやって選ばれていますか?

深谷:いわゆる大型書店では目につきにくい本とか、手に入りにくい本を置きたいと思って選んでいます。でも、うちは古本屋で、スペースには限界があるので、基本的には入り口すぐにある机のところだけというふうに決めて、そこに置けるなかで取捨選択しています。

コンビニ感覚で立ち寄れる店づくり

杉田:大型書店は決めた本を買いに行くには便利だけれど、情報が多すぎて、「こんな本あったんだ!」というものに出会いにくい。だから、この規模の本屋さんがあってよかったなと思います。本屋さんって何も買わなくてもあんまり気を使わない場所でふらっと立ち寄れます。喫茶店だったら何か飲まなくてはいけないし、服屋だったら声をかけられる。もちろん本も買いますけど(笑)

深谷:お気遣いありがとうございます(笑)私も同じように感じます。大型書店は探し物するには大助かりだけれど、棚を見て歩き続けていると、ちょっと疲れてしまう。ある程度小さいお店の方が、全部棚が見られて、こんなのあるんだって見つけられますよね。

あと、私の中で、語弊があるかもしれないんですが、「コンビニ」みたいな店にしたいというのがどこかにあるんです。コンビニって、用がなくてもぶらっと行けて、棚を見てまわるうちに気分転換になって、結局買うものが今日はなかったなという時があってもいい。何回か行っているうちに店員さんとちょっと顔見知りになって挨拶くらいすることもあったりして。それくらいが居心地良い気がするんですよね。

杉田:お店の方との距離感は居心地につながりますよね。

深谷:自分がお客の立場の時、常連さんと店主さんが話し込んでいるお店だと、自分が入っちゃいけないのではないかという気持ちになってしまうんです。だから、店番しつつ顔見知りのお客さんとおしゃべりするのは楽しいんですが、他のお客さんが居心地悪く感じてしまうかもしれないので、そこは我慢して、どんなお客さんも居心地の良い、ぶらぶらできる場所にしたいなと思っています。

ちなみに、何か買って帰らないのも悪いなと思われる方もいらっしゃると思うので、「本と道草」さんという読書喫茶をされている方にお願いして、お菓子を置いてもらっています。今日は買いたい本が無いなという時、じゃあお菓子を買っていこうかっていう方は結構いらっしゃるんですよね。

杉田:すごく細やかな気遣いだったのですね!

最後に、今後の展望を教えてください。

深谷:店が美殿町に移転してきて2年半が経ちますが、未だに「ここいつからやっているの?最近でしょ?」と言われることがあるので、美殿町には徒然舎があるよというのを岐阜の方々にもっと浸透させたいです。

あと、この辺りにもっと文化的なお店が増えたらいいなとずっと思っています。そのためにもうちが頑張って店を続けていって、徒然舎に来ているお客さんが来るような店をやろうという人が集まってきたらいいなという想いを持っています。

杉田:深谷さん、ありがとうございました!


徒然舎

住所:岐阜市美殿町40 矢沢ビル1階

営業時間:11時〜19時

定休日:火・水

HP:http://tsurezuresha.net/

2017-06-12 | Posted in 新刊の取材Comments Closed 

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