《TOFU magazine 旅する岐阜 28》/【各務原市】山の前製作所

TOFU magazine 28」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第28回は各務原市を訪れました。

《旅する岐阜28 Kakamigahara 》

大切に手元に置きたい
愛くるしい〝ほろほろ人形〞

そのなんとも愛らしい表情をした人形たちに、一目で心を奪われた。お団子ヘアのお姉さん、ベレー帽を被ったおすましさん、立派なヒゲをたくわえた紳士。自分に似ている子、あの人に似ている子…。みんなうちへ連れて帰りたくなる。

佐伯友裕さんと知子さん夫婦が各務原市にアトリエを構える「山の前製作所」。

友裕さんは結婚3年目、31歳のときに思い立って脱サラ。「それまでも趣味で木工をしていたんですが、当時大阪に『TRUCK』という家具屋ができて、木工ブームが起きて。僕も触発されて、理想と情熱をもって木工をやろうと思ったんです」。高山市にある岐阜県木工技術スクールで1年間学んだ後、鶏舎だった建物を借り、2012年にこの工房をオープンした。

オーダー家具や子ども家具を製作する友裕さんの傍らで、元来ものを作ることが好きで、美術系の短大で立体、油絵、染色などを幅広く学んでいた知子さんもまた、ごく自然に木工に携わり始める。

そしてある日、開催した木工教室の参加者が加工に失敗した引き出しのつまみに、マジックペンで何気なく顔を描いてみると、「何かピンときたんです!」。それが〝ほろほろ人形〞が誕生するきっかけだった。

家具製作の端材を活用して、次々と生まれた人形たち。いちごの被りものをしていたり、カップケーキの形だったり。猫や犬、クマ、干支の動物シリーズも、さらには、頭の部分が花瓶や針山、ライトになった人形も。

「頭に花が咲いてたり、光ってたりしたら可愛いかなって。自分が作りたいと思った感覚を形にするんです。だから、わりと作るものは行き当たりばったり」と笑う知子さんに、製作現場を見せてもらった。

もとになる角材には、下書きが一切ない。旋盤(せんばん)と呼ばれる工作機械に角材を取り付けて回転させ、専用の刃を当てて削っていくと、みるみる頭から顔、首、胴体が出来上がっていく。

「いろんな木の端材を使うので、色や木目や節の出方もばらばら。特にカエデやトチはスポルテッドというカビや菌によってできる模様があることも多いんですが、それも木の個性。木を見ながら、それぞれの個性をそのまま生かして削っています」。漆塗料で顔や体を描き、植物性オイルで仕上げるまで、すべてが手作業。だからこそ、似ていても同じ人形は一つとしてない。

「いつか、この子たちがアンティークになったらいいなって思うんです」。ここから旅立った人形たちはきっと、そんな知子さんの願い通り、誰かのもとで何十年先も、大切に愛されているに違いない。

ほろほろ人形はおもにオンラインストアやイベントで販売。不定期で工房の展示スペースをオープンすることもあるので、オープンの日程はWEBサイトやInstagramでチェックを。

山の前製作所
各務原市各務山の前町2-18
TEL.070-5440-2411
https://www.yamanomae.com/
Instagram:@karakoma_to

***


「TOFU magazine」は、東京や岐阜を中心とした配布店舗にて入手いただけるほか、「岐阜ホール ONLINE STORE」でも、送料のみでご購入いただけます。(送料がお得な定期便もご利用いただけます。)

TOFU magazineを購入する

TOFU magazineを定期購読する

2022年07月11日作成
関連記事