《TOFU magazine 旅する岐阜 25》/【中津川市】もりのいえキッチン
「TOFU magazine 25」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第25回は中津川市を訪れました。
《旅する岐阜25 Nakatsugawa 》
自分たちの暮らしを見つめ
恵那山麓に家族で築くコミュニティ
丸いお弁当箱に溢れんばかりの黒米のごはんとお惣菜。中津川市落合で2021年5月にスタートした「もりのいえキッチン」のお弁当「旬のタマテバコ」だ。
地元産の恵那どりの唐揚げはスパイスでアジア風に味付けし、もちきびの揚げ団子はきのこ餡をかけて。ごぼうと豆豉のきんぴら、蓮根のムニエル、ブロッコリーはクミンで炒め、赤大根は麹漬けに。デザートは笹の葉でくるんだリンゴと八朔の寒天を。自家製の発酵調味料を活かした玉手箱のようなお弁当が、目も舌も、そして心も楽しませてくれる。
店主の森本理恵さんは、岐阜県羽島郡岐南町の出身。学生時代に経験した北アルプスの山小屋のアルバイトが「楽しくて仕方がなくて」、その後も、長野県安曇野市にある宿泊や農業、レストランなどが融合したコミュニティ「シャロムヒュッテ」やいくつかの山小屋、スキー場で働た。そして、山梨県の農家で働いていた時に森本正則さんと出会う。
大阪府出身で、東京で経営コンサルタントとして活躍していた正則さんは、1995年の阪神淡路大震災を機にその生き方を大きく変えていた。「震災が起きて、当時の暮らしがなんて脆(もろ)いのかと思ったんです。いざ何かがあった時、自分は生きるすべを何も知らないんだと」。
会社を辞め、山梨県の八ヶ岳に建てた別荘へ移り住み、知的障害者支援施設でコックとして働きながら、自宅の一角を陶芸工房として開放した。そこに、ふと陶芸体験に訪れたのが理恵さんだった。
結婚後、二人は田舎暮らしができる場所を探し、2005年に中津川市加子母に移住。築150年以上の古民家を改修して家族5人で暮らし、田畑を耕し、コミュニティ「もりのいえ」を立ち上げ、ゲストハウスを運営。さらに、自家栽培の唐辛子とニンニクをたっぷり入れて独自に調合した辛味ソース「大辛ファイヤー!」を製造販売する。
子どもたちの成長に伴い暮らし方が変わると、2021年4月に市街地に近い落合地区の空き家に引っ越し、「もりのいえキッチン」をオープンした。なんとも波乱万丈な人生に思えるが、本人たちは不思議なほど気負いがなく、自然体で、たくましい。それは、二人で〝生きるすべ〞を克ち取ってきたからだろうか。
「歩いてすぐの丘へ行ってみませんか。見晴らしがいいんですよ」。誘われて小高い丘の上に立つと、眼に雄大な恵那山がそびえていた。「この景色が大好きなんです。見もらえて良かった」と理恵さん。
陽に照らされたその笑顔があまりにも素敵で、忘れられない。
もりのいえキッチン
中津川市落合164-5
お弁当販売は火・水・木・土曜の11:00~売り切れまで
TEL.0573-67-7198
https://mori-no-ie.com/
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