《TOFU magazine 旅する岐阜 19》/【大野町】cafe yurara

TOFU magazine 19」に掲載した特集記事をご紹介しています。
岐阜県の42市町村を1号につき一つずつめぐる特集「旅する岐阜」。第19回は大野町を訪れました。

《旅する岐阜19 Ono 》

木々に囲まれた隠れ家のような
カフェで過ごす特別な時間

黒々とした土鍋の蓋をあけた瞬間に、立ちのぼる湯気。

炊きたてのお米が粒立って艶めいている。サラダはシャキシャキと小気味よい音を立て、ピンクペッパーの粒がはじけてふわりと香った。茄子の煮浸しから、じゅわりとだしが溢れる。弾力のある細挽き肉のハンバーグに刻んだ玉ねぎのソースがよく絡み、大葉が後味を爽やかにしてくれる。

噛むほどに旨みが広がるお米に、上品なだしがきいた味噌汁。そうだ、ご飯って、こんな風に五感を使って味わうものだったんだ。

岐阜県揖斐郡大野町に2019年にオープンした「cafe yurara」。店主の上野佳子(けいこ)さんが最初にこのカフェを始めたのは、本巣市にある商業施設の近く。遠方からも多くの客が訪れる人気店だったが、13年間走り続けたとき、一度立ち止まろうと休業を決めた。

そして約2年が経ち、移転先を探していた佳子さんは、知人から大野町にある古刹「来振寺(きぶりじ)」が所有するガレージを紹介された。内見すると、以前のカフェの白を基調とした可愛らしいイメージとは正反対。外壁や内装も真っ黒で、無機質でシャビーな雰囲気に戸惑った。

「でも、ご縁があって貸していただけるのも、チャンスなのかなと思ったの。誰にでもチャンスってあるんだけど、大事なのは、それをキュッと掴む準備があるかどうか」。佳子さんはもちろん、このチャンスを掴み取った。

「次にカフェをやるときは、絶対、土鍋でご飯を出そう、って決めていて」。

旅先で宿に泊まるのが好きな佳子さんには、旅館で出される土鍋のご飯が、何より美味しく、おもてなしの心が感じられるものだった。休業中に訪れた三重県で、伊賀焼の窯元「長谷園」に立ち寄り、見つけた土鍋に一目惚れ。「カフェで使おうって、とにかく車に積めるだけの土鍋を買っちゃった。まだ移転先も決まってなかったのに」。

そんな思い出のある土鍋でご飯を炊き、お気に入りの陶器に農家から届く野菜をふんだんに使ったおかずを盛り、テーブルには古いチャーチチェアや革張りのソファを。レストランさながらのオープンキッチンは、客が佳子さんやスタッフが料理を作る姿を見ることができ、キッチンからはすべてのテーブルが見渡せる。「お客様が土鍋の蓋をあけて、わあって喜んでくれるのが好きなの。嬉しくなっちゃう!」。

幼い子どもと食事を楽しむ夫婦。幸せそうにデザートを頬張る女性客。窓から柔らかな光が降り注ぎ、穏やかな時間が流れていく。

そう、ここはわざわざ出かけたい、特別な時間を過ごすカフェなのだ。

cafe yurara
揖斐郡大野町稲富401-1
9:00~17:00 火曜定休
TEL.0585-32-5252
Instaram:@cafe_yurara

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2021年10月05日作成
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