掛軸の制作現場に潜入/偕拓堂アート

美しく良質な清流の水、美濃市が世界に誇る和紙…岐阜という土地がもつ特性は、現代まで続く伝統工芸を育ててきました。代表的なものに和傘や水うちわがありますが、実は掛軸もそのひとつ。岐阜は日本一の生産地といわれています。

その中でもとくに有名なのが「株式会社偕拓堂アート」さん。伝統を重んじる昔ながらの掛軸から、斬新なアイデアが光る新しいカタチの掛軸まで、枠にとらわれることなく幅広く活躍されている会社です。掛軸にまつわる絵画の制作から、掛軸の補修や卸し、小売などを一貫して行なっています。

そんな偕拓堂アートさんから「アートフェスタ2018秋」開催のお誘いをいただき、おじゃましてきました!

集合場所である「美術の森」は、偕拓堂アートのグループ会社である偕拓堂ギャラリーが営んでいるお店です。

絵画や額縁、工芸品の販売のみならず、雛人形や五月人形などの販売も行っています。(過去の記事はこちら!【ひな人形】【五月人形】)

店内に掛けられた数百点の掛軸は圧巻。どれも繊細で、ひとつの絵の中に物語を感じる掛軸ばかりです。

こちらに掛けられているのは、新しく始まった漫画シリーズの掛軸。このシリーズのチラシを、リトルクリエイティブセンターの臼井さんが担当しています。マジンガーZやデビルマン、キューティーハニーなど、リアルタイムで共に過ごしてきた人たちにはグッとくるものがあるのではないでしょうか。

美術の森から場所を移動し、掛軸を制作している工場へと向かいます。なんと今回はこちらの工場見学をさせていただけるようです。

普段は見ることができない工場内へ、いざ潜入!

案内していただいたこの部屋は、掛軸の修繕作業中。それぞれのテーブルごとに役割が分担され、テキパキとした手さばきで無駄なく黙々と作業が進んでいきます。

これは裏打ちといって、作品の裏側に和紙を貼り合わせているところです。掛軸はとても考えて設計されていて、この裏打ちをすることで巻いた時に絵の部分が擦れないようになっています。

親から子へ、そして孫へと、代々受け継がれていく掛軸。その長い年月を経ても色褪せない理由は、この大事な一手間にありました。

ちなみにこの裏打ちは、「裏打ち」「肌裏打ち」「中裏打ち」「総裏打ち」と、工程を重ねていきます。何枚も丁寧に貼り合わせていくことで、掛軸を守っているのです。

こちらは、古くなってしまった掛軸を新しく張り替えるため、もともと裏打ちされていた和紙を剥がしているところ。作品を傷つけないよう、1枚ずつ順番に、丁寧に剥がしていきます。修繕作業の中で最も集中力を必要とする重要な工程です。

固すぎたり量が多すぎたりする糊で裏打ちがされていると、この作業を行うのは至難の技。裏打ちをする段階で必要最小限の糊の量に留め、薄く薄く塗り伸ばすというところも、掛軸を末長く受け継いでいくために必要な技術です。

また、この作業場には蛍光灯がついていません。節電をしているわけではなく、表面の凹凸を見分けるためです。蛍光灯では光が強すぎるため表面の状態が見づらく、細かい凹凸を見逃してしまうんだとか。細心の注意を払いながら、掛軸の修繕作業は行われています。

「伝統工芸は“手”で作るもの」という固定概念に囚われないのが偕拓堂アートさん。次の作業場には大きな機械が導入されています。

先ほどが手作業の修繕、こちらが機械を使った掛軸の制作現場です。良質なものを安定した品質で提供していきたいとの考えから、掛軸専用の機械を独自で導入されています。

 

伝統を守り、そしてこれからの伝統を創っていく「偕拓堂アート」さん。これからの掛軸業界を引っ張っていく存在として、目が離せない会社です。

また、今回のような工場見学は通常は行なっておりませんが、丁寧に作られた掛軸は「美術の森」でお目にかかることができます。

気になった方はぜひ「美術の森」へ、伝統工芸に心震える芸術の秋をお過ごしください。

 


美術の森

住所:岐阜県本巣市宗慶557-1

営業時間: 10:00~18:00

定休日:水曜

WEB/http://bijyutunomori.jp/

 

株式会社偕拓堂アート

住所:岐阜県本巣郡北方町平成7-33

WEB/http://kaitakudo.co.jp

2018年09月28日作成
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