【さかだちインタビュー】山本佐太郎商店・大地のおやつ「あゆピー」が誕生するまで/後編

明治9年に岐阜市松屋町で創業した老舗油屋「山本佐太郎商店」さんと和菓子職人「まっちん」さんとのコラボレーションから生まれ、今では全国にファンを持つ『大地のおやつ』シリーズ。

かりんとうやサブレ、ビスケットなど、原材料から製法まで、安心安全とおいしさにこだわり、“30年後も愛されるおやつ” を目指して作られるお菓子『大地のおやつ』に新作の「あゆピー」が、2020年11月15日に誕生しました。

そこで今回は、山本佐太郎商店代表の山本慎一郎さんと和菓子職人のまっちんこと町野仁英さんに、あゆピーが誕生するまでのストーリーを伺ったインタビューを2日間にわたってお届けします!

※「山本佐太郎商店・大地のおやつ「あゆピー」が誕生するまで/前編」の記事はこちら

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引き算の美学でシンプルにおいしさを引き出す。タレは粗糖と国産丸大豆たまり醤油と水のみ。

-だるま堂製菓さんとともに、いよいよ「あゆピー」の商品開発がスタートしたわけですが、どんなところにこだわったのでしょうか。

まっちんさん(以下:町野) まず、最初のテーブルテストで、自分でタレの醤油と砂糖の割合を変えて50 〜60パターンのあられを作りました。タレの材料はシンプルにいきたいと、みりんは使わずに、醤油と砂糖の2つだけにしました。でも、その2つの中に無限の可能性があるな、と思って。

山本慎一郎さん(以下:山本) まさに引き算の考え方だよね。引き算の美学、というか。

町野 あられのお米の甘さやうまみがちゃんと感じられるように、タレはギリギリいける甘さでバランスを取ろうと、砂糖の量を1g、2g単位で変えて試しました。砂糖もきび糖や粗糖を使ってみたり、ざらめをかけてみたりもしましたが、最終的に粗糖に決めて、醤油も国産の丸大豆たまり醤油を使って専用のタレを作りました。

-すごい。材料の一つ一つだけでなく、配合にも並々ならぬこだわりが…。

山本 ここに試作があるんですが、袋に生地に対して醤油が何g、粗糖が何g、水が何ccと書いたメモが残ってます。

町野 そういえば、タレには味をのばして、粘りを取るために水を入れているんですが、だるま堂製菓さんではそもそもあられは水分が多いところがはぜてしまうのでタレに水を入れなていないそうなんです。だから、水を入れたタレに驚かれましたし、それを塗ったあられをきれいに焼いてもらうのもすごく苦労させてしまいました。

山本 工場で焼いてもらう試作も、とにかくたくさんやったよね。

町野 ピーナッツも有機栽培のものを探して、きちんと作られているものを使ってるんですが、ふくよかな風味と甘みがあって、適度な硬さもあっておいしいんです。このピーナッツの味や塩気とあられのバランスも難しくて…。とにかく初めての挑戦ばかりでしたね。

町野 実はそういうことがいっぱい起こって、あゆピーは販売開始の数日前になっても、商品ががまだ完成していないっていう大きな失敗をしていたんです。それでもまた1からタレを作り直して、職人さんに焼いてもらって。

山本 僕らは自社工場を持っていないんですが、商品を作ってもらう工場(メーカー)さんとは、フェアではくてはならないと思っています。9年前に「あゆの種」を作った当時は、僕らも未熟でしたし、遠慮してだるま堂製菓さんに自分の意見をぶつけることができなかったんですが、きちんと信頼関係が築けた今は、現場にも入らせてもらって、職人さんともああでもない、こうでもないと話し合いながら、一緒に「あゆピー」を作っていくことができたんです。

町野 だるま堂製菓さんではあられは全部、職人さんが焼いているんですが、焼きが浅いと白くなって味が乗らないし、焼きすぎると焦げてしまう。本当に職人さんの秒単位での見極めが必要で、そういう現場を見て「あられって、こんなに手間がかかってたのか!」って驚きました。

山本 現場を知ってるか知らないかでは、全然違いましたね。工程を知って、職人さんと一緒に作って。やっぱり僕らのおやつは一緒に作る “人” を知って作っていないと駄目なんだな、と実感することができました。そういう意味では、あれはいい失敗だったんだと思います。

岐阜善光寺の「善光寺大門まるけ」に出店し、自分たちの手で「あゆピー」を販売。

-記念すべき「あゆピー」の最初の販売は「善光寺大門まるけ」での出店でしたね。

山本 2011年に初めて「大地のかりんとう」のもととなった「油屋のかりんとう」を手売りしたイベント「岐阜町の縁日」と同じ、地元の岐阜町(ぎふまち)にある岐阜善光寺さんで行われている門前市「善光寺大門まるけ」で、自分たちの手で最初に「あゆピー」を売ろう、と。

町野 とにかく、原点にかえろうと思ったんです。袋に貼るシールの「あゆピー」の文字も一枚ずつ、自分で書いたんですよ。全部で1,900枚もあったんですけど。しかも、最初は水性ペンで書いてたから滲んでしまって、途中から油性ペンに変えて(笑)。

-1,900枚も手書きを!?でも、出店していた時のまっちんさん、とても楽しそうでした。

町野 はい、楽しかったです!今の時代はいろんな作り手さんがいます。その中で自分にしかないものは、シンプルにまっすぐにおやつを作って喜んでもらうことやと思うんです。自分でたくさん失敗して、でもできたものは特別じゃなくて、ほんまに気軽に食べてもらえるような、そういうおやつを作りたいと思ってます。

山本 善光寺大門まるけにも、ずっとまっちんを慕ってくれてる人が京都から、わざわざ「あゆピー」を買いにきてくれて、2年ぶりくらいで会えたよね。そういうのも、本当に嬉しかったよね。

-「あゆピー」をいただきましたが、まさにギリギリのタレの甘みの後にしっかりとしたあられのお米のうまみが広がって、ピーナッツもまたいい食感と味わいで。その軽やかさが癖になってついまた手がのびてしまう、無限ループから抜けられないおいしさでした!まさに、新しい岐阜銘菓の誕生ですね。これからも、山本さんとまっちんさんの情熱から、岐阜が誇るおいしいおやつが生まれることを楽しみにしています。ありがとうございました!


「あゆピー」発売&「大地のかりんとう カカオ」全国販売スタート記念!

岐阜ホール「山本佐太郎商店と楽しむ冬ごもり」 開催

2021年は「岐阜ホール」のショップにも新たに、鮎のかたちのあられが可愛らしい「あゆぴー」と、待望の全国販売がスタートした「大地のかりんとう カカオ」が仲間入りしました! そこで、岐阜ホールでは、大人気の山本佐太郎商店さんのおやつを集めて販売する『山本佐太郎商店と楽しむ冬ごもり』を開催します。ぜひ、買いにきてくださいね!

会場:岐阜ホール(東京都台東区上野桜木1-4-5 2F)
期間:2021年1月16日(土)〜(売り切れ次第終了) 
営業時間:12:00-17:00(状況により変更の可能性あり)
定休日:木・金曜
販売商品:あゆぴー、大地のかりんとうカカオ、おいものかりんとう、おからのかりんとう、ツバメサブレ、3じのビスケット、ともだちビスケット、[冬季限定]よいこのあんこ、おやつこ
Instagram:@gifuhall Twitter:@gifuhall Facebook:岐阜ホール


山本佐太郎商店

住所:岐阜県岐阜市松屋町17

営業時間:9:00~17:00

定休日:第2・第4土曜、日曜、祝日

TEL:058-262-0432

大地のおやつオンラインショップ:https://www.m-karintou.com/

※「あゆピー」は現在、山本佐太郎商店、ツバメヤ柳ケ瀬本店、和菓子工房まっちん、長良川デパート湊町店、岐阜ホールのみで販売しています

2021年01月15日作成
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