【岐阜】第8回岐阜祭奉賛 岐阜まち歌舞伎
先日お稽古に潜入させていただいた「岐阜まち歌舞伎」の本番が、4月4日(木)に開演されました。
今年で8回目となる岐阜まち歌舞伎、もうすっかり「4月4日といえば!」という認識が定着しています。
そのためか、年々席が埋まるスピードが早まっているような…さかだちブックスが少しだけ遅れて到着するような頃には、会場はもちろん満席、客席からは「開場の時間に来たけど、もうほとんど埋まってたのよ…」という声も。
みなさんの期待が集まる中、今年の岐阜まち歌舞伎もスタートです!
今回の演目は「御存鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)」。
舞台は江戸の刑場からほど近い場所にある鈴ヶ森です。鈴ヶ森と聞けば江戸の人は「刑場」「追い剥ぎ」を連想する物騒な場所。
そんな鈴ヶ森の暗闇の中で、雲助たちが会話をしています。「雲助」とは、まさしく追い剥ぎをする側の物騒でやんちゃな住所不定の人たちです。
演じているのは柳ケ瀬商店街の理事長 林さん、cd shop songs 鬼頭さん、メイメイ株式会社 浅野さん、elephantdesignの門脇さん。
林さんは昨年も出演されていましたが、他の3人は初出演です。
「かかあのおむすびが…」
「かかあのどら焼きが…」
と、鬼頭さん・林さんの奥さんたちのネタが飛び出すと、なんとそのおむすびとどら焼きを会場に振る舞うサプライズが!
会場前列からは一斉に手が伸び、小さなお子様たちからは「おむすび欲しい〜!」「どら焼き〜!」という元気な声が飛び交います。演者の情報がいたるところに盛り込まれてこその岐阜まち歌舞伎ですね。
いい儲け話がないかとたむろしていると、飛脚役の松枝秀空くんがやってきます。一昨年の岐阜まち歌舞伎で、左官 長兵衛役を演じた松枝秀晃さんの息子さんです。
あれよあれよと身包みを剥がされ、こんな姿では飛脚として戻ることができない…もういっそ仲間に入れてくれと雲助たちにお願いします。しかし、金がないなら入れることはできない、とピシャリ。
金は持っていないが、金になる話ならある!と取り出した書状には、白井権八(しらいごんぱち)というお尋ね者を捕まえたら賞金がもらえる、と書いてあり、お金が欲しい雲助たちは鈴ヶ森で待ち構えることに。
「マルに井の字」が目印だという情報を頼りに探していると、「見つけた!」と声が上がります。
客席から舞台へと連れてこられたのは、なんと岐阜市長 柴橋正直さん!
しかし、井の字は井の字でも、これは岐阜市の市章。マルに井の字ではありません。
まさかの市長登場に、客席へと戻る途中でおひねりが飛んでいました。
引き続き待ち構えているところへ、一人の青年がやってきます。紅葉色の股引がなんとも色っぽい若いお侍さんです。
先ほどのように身包みを剥がしてやろうと取り囲む雲助たちですが、ヒョイヒョイとやられてしまいます。
その強さに、一旦は引いたそぶりを見せる雲助たち。すると飛脚が、着物に描かれたマークに気がつきます。マルに井の字、そう、この青年こそ、雲助たちが求めていたお尋ね者の白井権八です。白井権八を演じているのはヱビスの古田さん。
たたんじまえ!と飛びかかる雲助たちにビクともしない白井権八。刀を抜いたと気付き、雲助たちは逃げ惑います。
ここからが白井権八の見せ場です。
激しい殺陣で魅せていくのではなく、あえてゆっくりとスローモーションのように動くことで、歌舞伎ならではの立ち回りの美しさをじっくりと味わえる仕様になっています。刀さばきが美しい…!
暗闇の中、手探りをしながら権八と対峙していく雲助たち。
腕を切られ、足を切られ…
男前な顔もばっさり切られ…
冷静に考えるとちょっと、いやかなり怖いシーンですが、雲助たちのやられっぷりのコミカルさに、会場からは笑いが絶えません。
さて、合間に熱烈なキスシーン(?)も挟みながら
権八は次から次へと雲助たちを斬っていきます。
そんなところへ、もうひとつの駕籠がやってきました。えっさほいさと担いでいた人たちはその状況に驚き、権八は気付いていませんが、駕籠を置いて逃げてしまいます。
残された駕籠の中には、麩兵 川島さん演じる幡随院長兵衛(ばんずいいんちょうべえ)の姿が。
長兵衛は駕籠の中から権八の戦いっぷりを見ていました。
暗闇の鈴ヶ森で、今まさに目の前で人が斬られているという状況を前にしても尚、微動だにしない長兵衛。相当な大物なのでしょう。
雲助たちを片付けた権八は、真っ暗な鈴ヶ森の中で提灯のついた駕籠の存在に気がつきます。辺りを見渡しても人らしい姿は見えず、提灯の火が照らしているだけです。
火の灯を頼りに、刃こぼれをしていないかと刀の様子を確認します。
そこでハッと駕籠の中にいる人の姿に気がつきました。
「お若えの、お待ちなせえやし」
「待てとおとどめなされしは、拙者がことでござるかな」
「通りかかった鈴ヶ森、お若えお方のお手の内、あまり見事と感心いたし、思わず見惚れておりやした。お気遣いはござりません。まあ、お刀をお納めなせえまし」
提灯を持って降りる長兵衛に対し、権八は油断はできないと言わんばかりに刀を向けて絶妙な間合いをはかります。
しかし、ひと間置いて頷き合い、長兵衛の持っている提灯で改めて刃こぼれを確認させてもらう権八。それにしても、刀を向けられていても動じることのない長兵衛は、やっぱり大物ですね。
お互いの身のうちを少し話したところで、長兵衛が地面に落ちている書状を拾います。
権八のものではないか?と渡し権八が内容を確認すると、そこに書かれているのは自分自身のことでした。
ハッとした様子を見て、まあ、まあ、と、手紙をこちらに渡すように声をかける長兵衛。
読んでしまえば自分がお尋ね者であると長兵衛にバレてしまう…権八は刀の柄に手をかけてじっと見入りますが、全てを理解した長兵衛は、これでいいだろうと書状を提灯の火で燃やしてしまいます。
長兵衛は権八に、江戸にいる間は自分が面倒をみましょうと受け合い、舞台は幕を閉じました。
今年も大盛況だった岐阜まち歌舞伎。最後は恒例の「おばば」の大合唱!
今年の帰り道も、お客さんの口からは「あの人たち役者さんじゃないんだよね…?」「今年もおもしろかったなあ」「あのシーンよかったね!」という声が聞こえてきます。「来年はもっと早く来よう」と、終わって早々に来年の岐阜まち歌舞伎を楽しみにしている方も。(かくいう私たちも同じですが…)
毎晩遅くまでお稽古に励んできた成果は、お客さんの心をしっかりと掴んだようです。
岐阜町若旦那会さん、今年も素敵な舞台をありがとうございました!来年も楽しみです!
第8回岐阜祭奉賛 岐阜まち歌舞伎
日時:平成31年4月4日(木)
時間:開場18時 開演18時30分 (終演20時予定)
会場:伊奈波神社参集殿 三階 「稲葉座」
演目:「御存 鈴ヶ森」
料金:入場無料
主催:岐阜町若旦那会
指導振付:二世 尾上幸松 (鳳川伎連 喜久次)
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