【美殿町】酒を聴くvol2

1月18日水曜日、美殿町で日本酒と音楽のイベントがあると聞き、これはもう取材に行くしかないなとカメラを握りしめて行ってきました!

場所は美殿町にある「まちでつくるビル」の1Fにお店を構える「mirai」さん。

日本酒を飲むことができるお店ですが、こういったイベントも多く開催されているお店です。

 

お店に入ると、すでにテーブルの上には今回のセットが綺麗に並べられていました。

お猪口が4つとイカの塩辛、煮物…最高の組み合わせにお酒を飲む前からうっとり。

 

実は今回で2回目となる「酒を聴く」。

4種類の日本酒と、それぞれのお酒にあった音楽に耳を傾けます。

日本酒の飲み比べというのはよくありますが、そのお酒にあった音楽を聴きながら飲む、ということは確かにあまりありません。

じっくり飲んで、じっくり聴く。ちょっと大人のイベントです。

 

イベントの進行をしてくれるのはこのお二人。

写真左側が「assemble」の渡邊さん、右側が「cd shop songs」の鬼頭さん。

「日本酒に合う音楽を探す、っていうのはなかなか難しいんだよね」なんて笑いながら、イベントスタートです。

 

 

1つ目のお酒は、奥飛騨酒造「初緑 斗瓶囲い 大吟醸」

 

 

お酒の解説をしてくれるのはもちろんこの方、miraiの店主 滝川さん。

滝川「フルーティーで飲みやすいから、女性ウケするお酒ですね」

 

 

このお酒に対して、鬼頭さんが選んだ音楽は「I Can Sing a Rainbow」。

オランダの音楽で、“虹のように唄う”という意味だそうです。

 

鬼頭「一口飲んだ時に浮かんだのは、美しい葡萄畑の風景。美しい味、美しい畑。だからこそ、気品に溢れた美しいこの曲がぴったりだと思ったんだよね」

 

各テーブルにお酒が注がれたところで、音楽が流れだします。鬼頭さんが話していた通りの、華やかで美しい音楽です。

“音を意識しながら味を楽しむ”という初めての体験…これは面白い!

ただ味わうだけではなく、今流れている音楽はこのお酒をイメージしたものだ、と思うと感じ方も変わります。

先に葡萄畑という話を聞いているからか、私の頭の中にも爽やかで美しい風景が浮かびました。

そして「初緑」の飲みやすいこと! 口に含んだ時に感じるスッキリとした甘さは、たしかに葡萄のようです。

 

渡邊「でもこのCDあれなんですよね、あの〜…(笑)」

鬼頭「…廃盤です。(笑)」

渡邊「皆さん、レアですよ。廃盤ですからね、今ここでしか聴けないわけですから。」

 

まさかの廃盤。いやしかし、非常に上質で心地よい音楽でした!

 

 

さて、2つ目のお酒は、御代桜醸造「御代桜 純米吟醸 搾りたて」

若き天才杜氏が蔵を仕切る御代桜醸造。岐阜を超えて愛されている人気の酒蔵です。

 

滝川「御代桜醸造にはもうひとつ“津島屋”っていうお酒があって、それは良い意味であまり岐阜っぽくない。それに対してこの“御代桜”は、地元でずっと愛されてきた味を大切にしながら現代へ引き継いでる感じ。」

 

 

このお酒に対して鬼頭さんが選んだ音楽は「Pasarero」。

鬼頭「このお酒には日本人らしさ、血と骨がしっかりと守られている印象を受けた」

「Pasarero」はもともと、アルゼンチン音楽のカリスマ  カルロス・アギーレの曲ですが、今回聴くのは「Ace Seca Trio」というトリオによるカバー曲。

アルゼンチン音楽の伝統を大切にしながら新しい音楽を作ろうと試行錯誤している三人組によるカバー、ということでこの曲を選んだんだそうです。

 

渡邊「でもこれも…」

鬼頭「廃盤です!」

渡邊「また聴きたいな、という方はぜひsongsへお越しください(笑)」

 

 

 

なんとなく耳馴染みのないリズム感だなと思っていたら、どうやらアルゼンチン音楽は3拍子が特徴なんだとか。

お酒のお味は“これぞ日本酒”といった風味で、搾りたてならではのフワッとした感じが美味しいお酒でした。

滝川「すごくニュートラルで、『うん、日本酒だな。うまいな。』って感じる日本酒らしいお酒です。」

 

 

 

ここでちょっと休憩。

参加されている皆さんもほどよく出来上がっています。

 

 

 

さて、後半戦へと参ります。

鬼頭「前半2曲はちょっと背伸びして選びました。CD屋として、ちゃんと頑張って選んだぞ!っていうのを出したくて…(笑)」

渡邊「なかなかね、難しいですよね(笑)」

鬼頭「後半はsongsの閉店後、居酒屋songsって感じのくだけた曲を選びました」

果たしてどんな曲を選ばれたのでしょうか。

 

3つ目のお酒は、蔵元やまだ「玉柏 ささ濁り」

滝川「お店をやっていて、マスターの一番好きなお酒は?って聞かれること、多いんですよ。でもたくさんのお酒を扱っている立場として、『これが一番好きです』とはなかなか言いづらい。」

確かに、じゃあ今オススメしてくれたお酒のことはあまり好きじゃないのかな…と思われてしまっても困りますよね。

滝川「でも言っちゃいます、僕はこのお酒が一番好きです」

言っちゃった!

滝川さん曰く、このお酒は「自分の良しとするものをつくろう。」という気持ちが伝わってくるんだとか。

 

滝川「味を表現するなら“デレツン”。口に含んだ時はふわっとした甘い味わいで、抜けていく時は苦味や辛味を感じる。」

 

温度が上がることで味の表情が変わるので、ゆっくりと手で温めながら飲んで欲しいとのこと。

そして鬼頭さんが選んだ音楽は、「ぬか床」。

「後半戦ほんとに大変なんだよ〜」と笑いながら、「神様が『日本の音楽にちゃんと目を向けよ』って言ってるんだなと思って選びました」と鬼頭さん。

 

鬼頭「正直に言うと一番最初に浮かんだ曲はこれじゃない」

えっちがうの?とザワつく会場。

鬼頭「電気グルーヴの曲に“シャングリラ”ってあるじゃん」

渡邊「ヒット曲ですよね」

鬼頭「これの有名なエピソードで、歌詞が書けなさすぎて行き詰まったピエール瀧が『ずっと“トロフィー”っていう単語しか浮かばねぇ…』って弱音を吐く、っていう。僕も今その状況だなって(笑)」

そう言って流してくれた曲は、ぴんからトリオの「女のみち」。

曲がかかった途端、ここは赤ちょうちんのかかる居酒屋か!?という空気に包まれるほどの、ザ・昭和の曲。

鬼頭「僕これしか出てこなくて…でもsongs的にちょっとな…と思って一生懸命選びました。」

 

そうして選ばれた音楽が、ズビズバーという二人組の「ぬか床」。

普遍的でどこか懐かしい民謡のような、台所の風景がふっと浮かぶ優しい音楽でした。

 

鬼頭「土井善晴の言葉に『台所の平穏は世の中の平和に繋がる』っていうのがあって、その通りだなって思うんですよ。歌詞の“ぬか床”を“愛”に置き換えて聞くと、深い。」

 

 

 

4つ目のお酒は、2つ目のお酒と同じ御代桜醸造 「御代桜 三丁目のにごり酒」

滝川「ここの酒蔵がある太田宿沿いには他にも蔵がいっぱいあって、御代桜醸造は三丁目にあったから“三丁目の蔵”って呼ばれてたんですよ」

渡邊「決してノスタルジーな意味ではない、と」

滝川「そうそう、単純に三丁目にあったから三丁目の蔵」

 

 

にごり酒といえば、なんといってもこの「ドロッドロ」な感じ。

滝川「飲むというよりは、食す酒。口を動かしながら飲んでください」

 

そして鬼頭さんが選んだ曲は「Love Cry」

鬼頭「米そのものが残る味にはね、洋楽は太刀打ちできない。どぶろくとかにごり酒ってもともと神に捧げられたお酒なんだよね、そりゃもう洋楽は太刀打ちできないよ」

日本性がまざまざと映し出されるお酒を前に、悩みに悩んでひねり出した曲が「Love Cry」だったそうです。

 

鬼頭「これもかなりアクのある音楽。ちょっと変な曲なんだけど、でもすごくいい曲なんですよ」

 

にごり酒を日本酒の根源とするならば、この曲は人間の暮らしの根源に根ざした音楽。

こう前置きされて流れてきた曲は、ファンファーレのような音から始まりました。

そしてメロディに合わせて「ハラヒリハリハレ〜」という歌声が…歌詞というより、リズムに乗って口に出た音、という感じです。

なるほど、たしかにちょっと変わってる曲だけど、自由に吹かれるサックスと、その音に自由にのる声が心地いい。

 

そんなことを考えながら口に含むにごり酒もまた、ごろりと残る米の風味がうまい。おいしいっていうか、うまい。

微発泡で口当たりがしゅわしゅわとしているところも楽しいお酒でした。

 

 

 

渡邊「これで日本酒4つと4曲全て出し切ったんですけど…思ったより早く終わっちゃったんですよね」

鬼頭「ちょっと時間あまっちゃったね」

滝川「というわけで、5つ目ご用意いたしました。」

 

おお〜〜〜!

 

拍手とともに迎えられたお酒は、杉原酒造 「射美」

滝川「岐阜の揖斐にあるんですけど、自称『日本一小さな酒蔵』って言ってるんです」

地元ではあまり売れていなかったという経営難の時代を経て、悩み抜きこだわり抜いてつくられたこのお酒。

現在では全国の販売店から声がかかるほど人気の銘柄ですが、なんせ「日本一小さな酒蔵」です。生産量には限りがあり、地元である岐阜ですら入手困難なんだとか。

あまりにも手に入らないということで、首都圏では「射美は秘酒」と言われているようです。

 

滝川「ちなみにこの青いラベルは一年熟成されたお酒で、超レア。岐阜で飲めるのはここだけ。超貴重。」

 

即興でお願いします、と投げかけられた鬼頭さんが選んだ曲は「大寒町」

鬼頭「スーパーフォークソングです」

 

熟成されてトゲトゲしさが抜けたという「射美」と、矢野顕子のまったりとした声は相性抜群。

「大寒町」の曲自体もゆったりとしていて、冬の時期にぴったりの歌でした。

 

 

 

5つ目のお酒も終わり、いよいよイベントも終了です。

滝川「次の美味しい時期は4〜5月。フレッシュなお酒が出回る時期ですね。」

次回は日本酒に限らず、岐阜で作られているお酒を出すっていうのもありかな、とのこと。

 

渡邊「普段の生活の中に少しだけ日本酒を、少しだけ音楽を取り入れてもらえたら嬉しいです」

 

ということで、今回のイベントは終了。

普段の生活の中で「日本酒を飲む」「音楽を聴く」ということはあっても、「日本酒にあった音楽を聴く」ということはなかなかありません。

二つを同時に行うことで、日本酒と音楽、それぞれにじっくりと向き合うことができ、普段との見え方や感じ方の違いに驚きました。

何気なくお酒を飲むというのも勿論素敵なことだけど、たまにはこうした飲み方をしてみるのも面白い。

皆さんも是非一度お試しあれ!もしくはぜひ、次回「酒を聴く」に参加してみてください。

お酒を飲むという行為が、今よりもっと楽しく、面白く、深くなりますよ。

 

さてさて、次回はどんなお酒がと音楽が出てくるんでしょうか。

あ〜取材に行かなくっちゃな〜!

 


mirai

営業日:月曜〜土曜

営業時間:15:00〜24:00

住所:岐阜市美殿町17 まちでつくるビル 1F

 

 

2017年01月21日作成
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