【INTERVIEW】カフェギャラリー水の音

先日岐阜ランチでご紹介したカフェギャラリー「水の音」のオーナー板倉倫子さんに、新しくお店をオープンしたことへの想いや、岐阜のまちについてお話を伺いました!

水路を挟んで2棟のうち、写真手前がカフェスペース「水の音」、奥がギャラリースペース「CHA-CHA NOTE inaba」です。

 

築100年以上の長屋を改装した空間。爽やかな風が通る。

作家さんの作品を使った食卓を提案したい

杉田:JR岐阜駅内のアクティブGのなかでもセレクトショップという形でお店をやられているということなのですが、こちらでカフェとギャラリーを開こうと思った経緯や想いを聞かせてください。

板倉:作家さんのものを展示してあるだけだと、お客様のなかでそれを実際に使うイメージが膨らんでいかないと思うんです。向こう(「水の音」の隣の建物)のギャラリーに作品が置いてありますが、かわいいとは思っても、展示物の一つとして通り過ぎてしまうかもしれません。中には見た感じはすごくごっつい感じがするものもあるので、どんな風に料理が乗っていくんだろうというイメージってなかなか難しいと思うんですよ。あそこに料理を乗せた雰囲気を提案していきたくて、ギャラリーにカフェをくっつけました。アイスコーヒーひとつ飲むのにも、こんなにかわいらしい器に入れて飲むとすーっとするとか、器ひとつのもので、食べるものが美味しい感じがすると思うんですよ。私の作る料理でも(笑)。いいお皿を使っていると。

アイスコーヒーのグラスは同じ作家さんのものでもひとつひとつ柄や大きさが異なる。グラス:富永一真

杉田:飲食業は今までされていたのですか…?

板倉:初めて!

杉田:本当ですか?!

板倉:初めてなんですよ。自分でもびっくりしているけれど、私がびっくりするより周りがびっくりしています。私料理ができないと思われていたみたいで、「料理できたの?!」みたいな感じで。自分の子供が小さい時からずっと、なるべく手作りのものを作ってきた主婦としての自信。子供が喜んでくれた時の嬉しさが元になっていると思います。それともう一つ、料理も作家ものだと思うんですよ。料理も創造するというか、創作をしていく。料理もアートですよね。美味しいものって味だけではなく見た目でかなり違うと思うんですよね。そういったこともあってもともと料理は嫌いではありませんでした。

杉田:でも、お仕事にするとなると話は別ではないですか?

板倉:そうですね。ひとつのものをお客様に出すまでに、犠牲者多数(笑)。主人とか毎日のように食べさせられていますからね! 辛いとか塩が足らんとか、バターっぽすぎるとか、ずっと毎日同じもの! これだったら出せるのではないかという段階になったら、お友達にも食べてもらって、メニューを追求しています。

現在のメニューは水菜とベーコンのサラダ。器:北野藍子

杉田:今はどれくらいのスパンでメニューを変えていますか?

板倉:なるべく旬の野菜を使いたいので、スパンというより無農薬にこだわったおたからファームさんから届いたお野菜によってメニューを決めています。私の料理はお野菜のエネルギーからできています。

杉田:素材ありきのメニューですね。

もうひとつの顔は“ポジャギ”の先生

杉田:本職はポジャギの先生だとお聞きしたのですが…

板倉:そうです。アクティブGもポジャギをやるために誘われたんですよ。

杉田:そうなのですね! ポジャギというのは初めて聞きました。韓国では結構主流なものですか?

板倉:韓国のポジャギと日本のポジャギと、認識がちょっと違って、ポジャギは本当は風呂敷みたいなものなんですよ。

店内には板倉さんお手製のポジャギが飾られている。こちらはまだ制作途中で、枠をつければ完成。

杉田:こういう風な(暖簾のような)使い方ではない?

板倉:今はこうして使っているけれど、本来は風呂敷という意味なので、ポジャギ教室の生徒さんが韓国に旅行に行ってポジャギを見たいと言ったら、風呂敷屋さんに連れていかれたというエピソードがあります。一般の人はそういうくらいにしか思っていないのです。手芸が好きだったり、伝統工芸が好きな人はちゃんと知っているんですけど。これは幾何学模様でパーツをくっつけているけど、刺繍だけしてあってもポジャギなんですよ。

杉田:ああいうパッチワークのようなものをポジャギと呼ぶわけではないんですね。

板倉:そうなんです、パッチワークというのはひとつの技法でしかない。ただ、日本の人は韓国のポジャギを、イコール韓国のパッチワークと思っていますよ。だから私も最初の頃は、ポジャギは韓国のパッチワークというわけではないという今のような説明を何回もしていたのですが、日本には日本のポジャギのあり方があってもいいかなというのがあって、最近は韓国のパッチワークですと言っています。

杉田:ポジャギとはどこで出会ったのですか?

板倉:20年近く前、私はアメリカンパッチワークをよくやっていたのですが、主人にはどうも趣味が合わなかったらしく、かけても外されていました(笑)。ある日、貿易の仕事をしていた主人が建築雑誌を読んでいるときに「これ素敵だね」と私に見せた写真に、ポジャギが写っていました。打ちっぱなしの壁にムクのフローリングが貼ってあり、李朝の家具があってその上に一枚のああいう布(ポジャギ)が垂れていたんですよ。今でもその時の光景が浮びます。そのときに作り方もわからず多分こう言う感じかなと作ったのが始まり。でも、その時は日本の生地を使っていて、なんかイメージが違いました。日本で生地を買おうと思ったら、売っていないんですよ。どこにも。どこ探してもない。これは韓国行くしかないわと思って。

杉田:すごい行動力です!

板倉:主人が貿易の仕事をしていて、その関係で仕事で韓国に行くときに一緒に行って、ネットで調べたポジャギの布を買えるところを訪れました。そうしたら、その人が7年間日本に住んでいた日本語がわかる人で、その人がポジャギの先生だったんです! それで、行ったり来たりしながら教えてもらい、布屋さんも紹介してもらいながら、やっていました。そのうち教えて欲しいという人がでてきて、同好会みたいな感じでポジャギの先生を始めたの。アクティブGから誘いがあったのも初めはポジャギのお店としてだったんですよ。

生活に溶け込んでこそ、美しいポジャギ

杉田:作家ものではなくて、ポジャギが先だったんですね。

板倉:そうなんですよ。ポジャギは飾るだけではつまらない。料理をお皿に乗せて提案していくことに楽しみがあるように、ポジャギもテーブルの上にテーブルセンターとして置いたりああやって掛けたり、コースターとしてグラスの下に置いたりすることがすごく素敵なので、そういった部分もトータルでポジャギを飾りたいと思う。昔から作家さんものは好きだったので、テーブルの上にポジャギを置きたいな、じゃあ一緒に(作家ものも)置いちゃおうかと。ここに長いテーブルセンターを置いて、お皿を置いたら素敵だなとか、作家さんのこのプレートポジャギに似合うよねみたいな感じです。そういう風にして徐々にセレクトショップになっていきました。

杉田:そして、ついにこのカフェに!

板倉:はい。それで飾っているだけでは物足りずに、お皿に料理を盛り付けたと。でもそれはあそこ(アクティブG)ではできないことだから。それと、ポジャギって光がささないと綺麗じゃないんですよ。ビルの中でもいいかもしれないけど、光が差して、朝から晩の光の移り変わりで、ポジャギの表情が変わっていくには、やっぱり自然光が必要なので、4、5年前からずっと物件を探していました。でも探しても探しても見つからなくて、やっとここを借りられるお話をいただいたのが去年の11月末でした。

杉田:まだ半年も経っていないんですね。

板倉:ポジャギ始めたとき、もし日本で布が売っていたら、わたしはここまでやっていなかったかもしれない。もし、韓国で会った人が日本語がわからなかったら、ポジャギをつくれていなかったかもしれない。ここも急だったけれど、自分の意志ではないところの力が、周りの力がすごく働いて、それがエネルギーになっています。そういう時って、これはやりなさいということなのかなっていつも思えるんですよ。ここもそういう風に思えたので。

杉田:ご縁というか、タイミングというか。なかなかこうして水路を挟んで2棟で最高のロケーションはないですよね。

板倉:ありがとうございます。そうですね。

金華山と長良川が大好き

杉田:岐阜でお店を営むことに対しての想いはありますか?

板倉:岐阜大好きなんですよ。長良に住んでいるんですけど、岐阜が大好き。金華山と長良川が大好き。金華山と長良川をよその県の人が粗末に行ったら、とても嫌な気分になります。またこの地域は岐阜町といって昔から岐阜の中心の場所だったそうです。ここに住んでいる人が岐阜町という言葉を使うときに、この場所にすごく誇りを持っていると感じました。ここって大事な場所なんだなと。

杉田:県外の方がいらっしゃったら、どこをお勧めしますか?

板倉:長良川が好きなので、長良からずっと岐阜公園散策してもらい、金華山登れる人ばっかりではないと思うけど、周辺を見てもらい、河原町を見てもらい、そこらへんを散策して伊奈波神社に行って欲しい。そして、最後はアクティブGに。(笑)

10年先、幼馴染が集うような感覚で人が集う場に。そして作家ものをもっと身近に。

杉田:最後になりますが、これからやってみたいことやどんなお店になったらいいなということがあれば教えてください。

板倉:このカフェのテーマは、幼馴染が集うような場所。10年先に、作家さんのものについて、お客様同士で会話できるようなお店になればいいな。小さい頃、幼馴染と過ごしたような雰囲気で、ここで心を穏やかにできるようなそんな場所であればいいなと。ギャラリーの方は、もっと作家さんの作品を恐れずに、飾っておくんじゃなく、身近で作家さんのものを使っていただけるようなことを提案しながらやっていきたい。結局最初の話に戻りますが、そういう提案するをためにここがあります。作家さんのものを手に触れて感じて、見て感じて欲しい。

杉田:なかなか作家さんの器で食事をする機会はないのできっとよいきっかけになると思います。使われるところまでがゴールというか。

板倉:そうですね。作家さんも使って欲しいと思う。このまま置いてもああそうって感じだけど、ここに料理を乗せるとすっごくきれい。「世界の平和は食卓から」と言われたんですよ。一瞬大げさなように思えますが、やっぱりおいしいものを食べると笑顔になるじゃないですか。

杉田:なるほど。たしかに、その通りですね。板倉さん、ありがとうございました!


水の音/CHA-CHA NOTE inaba

住所:岐阜市新桜町12/岐阜県岐阜市靱屋町24

営業時間:11時〜17時

定休日:第1水曜・毎週木曜

HP:https://www.chacha-note.com/

2017-06-07 | Posted in 新刊の取材Comments Closed 

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