【各務原】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館/前編

各務原市にある航空自衛隊岐阜基地のすぐ南にあり、“空宙博(そらはく)”の愛称で親しまれている「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」。国内唯一の本格的な航空と宇宙の専門博物館へ取材に伺いました!

そこで、見どころ満載の館内を「航空エリア」と「宇宙エリア」を中心に、前後編の2回に分けてご紹介します!

1996年に開館した「かかみがはら航空宇宙博物館」が、岐阜県と各務原市の共同事業で3年半の歳月をかけて全面改装。2018年3月に「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」としてリニューアルオープンしました。

リニューアルされた建物は以前の1.7倍の広さになり、真っ青な空の色を映したようなブルーの外観がひときわ目を引きます。屋外にも自衛隊の救難飛行艇など迫力のある実機が展示されていて、すでに気持ちが高ぶります!

それでは、早速1階の展示室からめぐっていきましょう!

[A1 航空機と航空機産業の始まり]

まず最初に現れるのは「陸軍 乙式一型偵察機(サルムソン2A2)」の1/1模型。サルムソン2A2は、1918年(大正7年!)に川崎造船所(現在の川崎重工業)がフランスのサルムソン社から製造権を取得し、3年4カ月もの歳月を経て試作機が製造されて、1922年に当時の各務原飛行場で初飛行に成功!その後、各務原で約300機が量産され、陸軍の偵察機として使われました。

つまり、各務原の航空機産業のはじまりとなった記念すべき飛行機なんですね!

機体の骨格はすべて木製で、翼は羽布貼り。プロペラも木製で、その後ろの部分はエンジンの熱から機体を守るためにアルミ合金で覆われています。

ちなみに最初の試作機は、神戸の工場から飛行場のある各務原まで移送される際に、神戸から岐阜駅までは汽車、岐阜駅からはまだ鉄道がなかったため、牛車に載せて移送したんだとか…!時代を感じますね。

そして、展示室の天井を見上げると…。

世界で初めて、人が乗って飛行に成功した動力飛行機、ライトフライヤー号の実物大模型が!そう、あの有名なライト兄弟が、1903年(明治36年)に初めて操縦しながら空を飛んだ飛行機です。

ちなみに、初飛行では12秒間、36メートルを飛んだのだそう。それからわずか66年後の1969年には、人類が月に降り立ったなんて、すごい進化ですよね…。それだけ、人類の空や宇宙への憧れが強いということかもしれません。

続いて、各務原台地の歴史を再現したジオラマでは、日本最古の飛行場が作られたことによって、鉄道が開通したり、さまざまな航空機関連の工場が建てられたりと、各務原が飛行機のまちとして発展を遂げていく様子が地図や映像とともに紹介されます。

この映像も立体的でとてもわかりやすく、思わず見入ってしまいます!

[A2 戦前・戦中の航空機開発]

こちらは、戦前・戦中の航空機開発をテーマとした展示です。2度の世界大戦において、世界の航空機技術は飛躍的な革新を遂げ、日本でも土井武夫氏や堀越二郎氏らの手により、こうした戦闘機が生み出されました。

ここに展示されているのは、日本を代表する2つの名機。そのひとつが現存する唯一の実機である三式戦闘機二型「飛燕(ひえん)」で、宙に浮かんでいるのが各務原飛行場で1939年に初飛行した十二試艦上戦闘機「零戦(ぜろせん) 試作機」の実寸大模型です。

「飛燕」の機体はジュラルミン(軽合金)で作られているんですが、よく見ると機体の各部分が接合されていることがわかります。高速で飛行したときの空気抵抗を抑えるため、出来る限り機体表面が滑らかになるように接合していたそうです。

そうした細かなところまで実際に感じ取ることができるのも、実機の展示ならではですね。

スタジオジブリの映画「風立ちぬ」の主人公のモデルとなったことでも知られる堀越二郎氏が主任設計者であり、国内で1万機以上が製造された「零式艦上戦闘機(零戦)」と、川崎航空機の土井武夫技師を中心に開発された「飛燕」。

展示室には、それぞれの機体に使われていた計器盤のほか、飛燕などのエンジン、堀越二郎氏の直筆の手紙や飛行士たちの飛行服なども展示されていて、戦中の日本に思いを馳せることができます。

[A3 戦後の航空機開発]

空宙博の中でも最も広いこちらのゾーンには、20機の実機がずらりと並んでいて、まさに圧巻!!

開発の年代ごとに配列されていて、それぞれの機体にまつわる技術開発の進歩などがわかりやすく解説されています。

戦後、日本では7年間、GHQによって航空機の研究・開発・製造が中止されましたが、航空機開発が再開されると、大空への挑戦が再び積極的に行われてきました。

短距離離着陸機の研究・試作、ジェット機の開発・製造、垂直離着陸機などのさまざな挑戦が重ねられ、生み出されてきた飛行機たち。その技術が現在の航空宇宙産業の発展へとつながっているんですね。ちなみに航空機産業が盛んな各務原市では、実は旅客機のファーストクラスのシートも作られているんだそう!

[企画展「A26展 もっと遠くへ―長距離に挑んだA26―」]

2階奥のフロアでは、2022年1月10日(月・祝)まで、企画展「A26展 もっと遠くへ―長距離に挑んだA26―」を開催しています。(好評のため、会期が延長されています!)

※企画展の写真は会期延長前のもので、現在は2階で開催されています

長距離飛行の世界記録に挑むために日本で開発され、飛行距離の延伸に重要な役割を果たした「A26」機。1944年には、非公式ながら飛行距離16,435メートルの世界記録を達成しました。

A26は1000馬力級エンジンを2基備えていて、細長い主翼が特色です。製作された2機のうち、2号機は、1943年にドイツへ向かったのちに消息不明となりました。会場には、1/50サイズの模型が展示されています。

当時の長距離飛行の航路図を示した模型が見られるほか、A26の開発計画、世界や日本の長距離航空史、今後の航空機開発についてなどをパネルで分かりやすく紹介しています。さらに、A26が飛行する様子や、2号機が最後にドイツに向かって飛び立つ様子を収めた貴重な記録映像も必見です。

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展示を見終えると、すぐ近くにこんなシールプリント機を発見!

空宙博オリジナルフレームのシールが作れるんです。親子や友だち同士でパイロットや宇宙飛行士になりきりながら撮影したらいい記念になること間違いなし!

ぜひ、みなさんも「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」を訪れて、実際にこの迫力のある展示を体感してみてくださいね。後編では「宇宙エリア」についてもたっぷりご紹介しますので、どうぞお楽しみに!

※【各務原】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館/後編の記事はこちら

(企画展「A26展 もっと遠くへ―長距離に挑んだA26―」の展示パネルは、さかだちブックスを運営する株式会社リトルクリエイティブセンターが制作させていただいています。


岐阜かかみがはら航空宇宙博物館【愛称:空宙博(そらはく)】

住所:各務原市下切町5-1

開館時間:10:00〜17:00(土日祝は18:00まで)※最終入館は閉館の30分前まで

入館料:大人 800円、高校生 ・60歳以上 500円、中学生以下は無料

休館日:第1火曜(祝日の場合は翌平日休み)、年末年始(12月28日〜1月2日)

TEL:058-386-8500

WEBサイト:http://www.sorahaku.net/index.html

2021年12月06日作成
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