【多治見市・瑞浪市・土岐市】10/18~11/17「ART in MINO 土から生える2024」に行ってきました!
2024年10月18日(金)~11月17日(日)の金・土・日・祝日に、“美濃焼”の産地、多治見市・瑞浪市・土岐市で開催されているアートプロジェクト「ART in MINO 土から生える2024」。
編集部が会場をめぐってアートに触れる1日を満喫してきましたので、そのレポートをお届けします!

「ART in MINO 土から生える2024」とは?
2008年に開催された「土から生える08 art in MINO」から16年の歳月を経て、復活されたアートプトジェクト。
参加アーティストは、プロジェクトの芸術監督を務め、多治見市で「ギャルリ百草」を主宰する陶作家の安藤雅信さんを含む13名。6つの会場でアート作品の展示が行われています。また、パフォーマンスやトークイベントなども多数開催。
※「ART in MINO 土から生える2024」の開催をご紹介した記事はこちら
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今回は岐阜市を出発して、6つある会場のうち、5つをドライブでめぐるコースです。
ギャルリ百草と百草の森(多治見)
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高田窯場跡(多治見)
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小山冨士夫 花の木窯(土岐)
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旧地球回廊 軍需工場跡(瑞浪)
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下石工組 旧釉薬工場(土岐)
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番外編 「美濃のラーメンどんぶり展」(多治見)
1. ギャルリ百草と百草の森
まずは、多治見市にある「ギャルリ百草(ももぐさ)」さんへ。








「ギャルリ百草」さんそのものが、建物も庭も圧倒的な美しさを備えていて、ここを訪れるだけで凛とした気持ちになります。安藤正子さんのキャッチーでありながら可愛いだけではない陶作品にも心惹かれました。
そして、“土の匂いを嗅ぐ”という行為は初めてでしたが、(エッセンシャルオイルのように、いろんな土の匂いを抽出した安藤雅信さんの作品「潜む」では、実際に土の匂いを嗅ぐことができるんです…!)おしろいのような匂いがしたりと、土によって匂いにもはっきり違いがあることに驚きます。








百草の森は、まるでジブリの世界に迷い込んだよう…!今朝生えたばかりであろうキノコも見つけました。まさに、土から生える、ですね!
9時半に岐阜市を車で出発して11時の開廊とともに展示を観覧し、12時にオープンした「ももぐさカフェ」で軽食のランチを。信州のルヴァンさんのパン2種とかぼちゃのポタージュのセット(限定・960円)と、ももぐさホットトースト(限定・880円)、飲み物をいただいたのですが、これがもう、たまらない!特にホットトーストはパン屋 二兎さんのパン、ソーセージはゴーバルさんという最強の組み合わせで、感動的な美味しさでした!
◾︎ ギャルリ百草と百草の森 11:00-18:00 〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町 2-8-16 展示作家/安藤雅信、内田鋼一、森北伸、安藤正子
2. 高田窯場跡
続いては「ギャルリ百草」さんから車で5分ほどの高田窯場跡へ。









かつて、魚網用のおもり「沈子(ちんし)」を製造していた窯場跡には機械や製造途中の沈子が今も残っていて、その空間に桑田卓郎さんのアートによる新たな解釈がレイヤーのように重ねられています。
その奥にある“モロ”と呼ばれる作業場の木造建物には、小島久弥さんが作り出した幻想的でロマンチックな世界が広がっていました!使われなくなった作業場の床に延びた蔦を道に見立て、ミニチュアの砕石場や作業場から宇宙へと(!?)繋いでいくアート作品は、この場所、この空間だからこそ生まれたものだと感じました。訪れる日の天気や時間によっても、きっと作品の見え方は変わるのでしょう。
◾︎ 高田窯場跡 11:00-18:00
〒507-0018 岐阜県多治見市高田町 1-53
展示作家/小島久弥、桑田卓郎
3. 小山冨士夫 花の木窯
次は土岐市の「小山冨士夫 花の木窯」へ。駐車場から気持ちの良い木立の中を10分ほど散歩しながら向かいます。





東洋磁器の研究者で陶芸家でもあった小山冨士夫氏が、晩年を過ごした自邸のそばに設えた「花の木窯」。この日はちょうど、約15年ぶりに花の木窯に火が入り、三日三晩焼成をする現場に立ち会えたのですが、ハナノキが生える静かな森の中で、のろしのように煙が立ち上る様子が印象的でした。
そして、2008年にも同じ場所で展示を行った藤本由紀夫さんが、16年前に敷き詰めたひび割れたタイルの上に新たにタイルを並べた「BROOM」は、踏むとパリン、パチリと音を立てて割れていく様が、心許なくも楽しくて、ついタイルの上を何往復もしてしまいました。
◾︎ 小山冨士夫 花の木窯 10:00-17:00(最終入場16:00)
〒509-5142 岐阜県土岐市泉町久尻 1528-7
展示作家/伊藤慶二、藤本由紀夫、内田鋼一
4. 旧地球回廊 軍需工場跡
花の木窯の後は、開場時間が16時までの「旧地球回廊 軍需工場跡」を目指して瑞浪市へ。





かつて軍需工場として掘られた地下壕。1993年から博物館「地球回廊」として開館しましたが、2021年に閉館して現在は入ることができない場所が、特別に「土から生える」の会場として限定オープンしています。こんな場所があったなんて…。
小さな扉をくぐると、中は薄暗くて、まるで鍾乳洞の中にいるように、ひんやりとした冷気と湿気を感じます。現実から切り離されていくような感覚に陥りながら進むと、やがて目の前に現れたのは、鬱蒼とした竹藪。上野雄次さんの作品「黒い庭」です。逆光の中に浮かび上がるのは竹の輪郭だけ。色を伴わないことで、より厳かに感じられるその世界に圧倒され、畏敬の念すら感じる空間でした。
10月20日にこの「黒い庭」で行われたアオイヤマダさんのライブパフォーマンスを編集した映像も上映していて、必見です。
◾︎ 旧地球回廊 軍需工場跡 11-16時
〒509-6133 岐阜県瑞浪市明世町戸狩 67-1(瑞浪市民公園内)
展示作家/上野雄次、迎英里子、アオイヤマダ
5. 下石工組 旧釉薬工場
最後は、土岐市下石(おろし)にある「下石工組 旧釉薬工場」へ。





やきものには欠かせない釉薬を製造していた旧釉薬工場は、2008年にも会場となっていて、2階には16年前に東京・目白で「古道具坂田」を営んでいた坂田和實さんが配置した、工場内に打ち捨てられていた備品がそのまま残されていました。ラベルが剥がれた瓶、カセットラジオ、椅子、篩(ふるい)…。坂田さんの“美しいとは何か”という問いへの答えが、今も確かにそこにありました。
1階には伊藤慶二さんのインスタレーションが展示されています。自由でユニークな発想に若いアーティストなのかなと思っていましたが、解説を読んで89歳と知って驚きました。各会場で詳しい解説を渡してくれるので、それを読んでその場所の歴史や背景、作品の意図などを知ってから作品を見ると、また感じ方が変わりますね。
◾︎ 下石工組 旧釉薬工場 10:00-17:00
〒509-5202 岐阜県土岐市下石町 900-1
展示作家/伊藤慶二、坂田和實
《今回訪れられなかった会場》
◾︎ 中島醸造 11:00-16:00
〒509-6101 岐阜県瑞浪市土岐町 7181-1
展示作家/沓沢佐知子、安藤雅信+森北伸
《番外編》 岐阜県現代陶芸美術館「美濃のラーメンどんぶり展」
5つの会場をめぐり終えると、時刻は17時。もう少しだけ足を延ばして、岐阜県現代陶芸美術館で11月17日まで開催されている「美濃のラーメンどんぶり展」(観覧無料)も観覧することに。






…すると、これがものすごい熱量の展示だったのです!
実は展覧会のディレクターはデザイナーの佐藤卓さん!日本国内のラーメン丼の約9割が、美濃で作られている(!!)ことに着目し、ラーメン丼を通して“美濃焼”の世界をつまびらかにする、という壮大なスケールの展示です。
ラーメン文化の歴史、丼の解剖、具の分析(!)、音の分析(ラーメン丼を鐘のように鳴らす体験は初めてでした!)、祖父江慎さんや横尾忠則さん、皆川明さん、土井善晴さんなど名だたるアーティストがデザインしたラーメン丼の展示、「土」にフォーカスした展示まで…とにかく圧巻の展覧会!美濃焼のルーツをたどり、土とやきものについて思考を深める絶好の機会でした!
美濃のラーメンどんぶり展
会場:岐阜県現代陶芸美術館 ギャラリーⅡ(岐阜県多治見市東町4-2-5 セラミックパークMINO内)
会期:20204年10月18日〜11月17日
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:会期中無休
観覧料:無料
WEBサイト:https://www.cpm-gifu.jp/museum/archives/9228v
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さて、こんな感じで丸一日、どっぷりと「土」を通してアートに触れ、アートを通してまた「土」や「美濃焼」、「創造すること」「美しいということ」「場の持つ力」を考え、感じることができた「土から生える2024」。
編集部がめぐったコースはあくまで参考に、気に入った作品がある会場でじっくり滞在するのも、全6会場をコンプリートするのも、多治見や土岐、瑞浪に美味しいものを食べに出かけながら気軽な気持ちで会場を訪れてみるのも素敵です。ぜひ、みなさんもアートプロジェクト「土から生える2024」を楽しんでみてくださいね!
◆作品鑑賞パスポートはオンラインストア・各会場にて販売中!
展示会場にて作品を鑑賞するためのパスポートは、展示最終日の11月17日(日)までオンラインストアにて販売中です。また、インフォメーションセンター(多治見・ながせ商店街)や各会場(花の木窯を除く)でも販売していますので、当日、会場で購入することもできますよ!
《鑑賞パスポートの料金》
・各会場1回 鑑賞パスポート(一般)¥2,000、(学生)¥1,000
・期間中フリー 鑑賞パスポート ¥3,800
ART in MINO 土から生える2024
開催日:2024年10月18日(金) 〜 11月17日(日)の金・土・日・祝日 の16日間
開催時間:10:00 〜 18:00 (会場により異なります)
作品鑑賞パスポート:前売り 一般 2,000円 / 学生 1,000円 / フリー 3,800円
会場:岐阜県多治見市 / 瑞浪市 / 土岐市 各特設会場
芸術監督:安藤雅信(陶作家・ギャルリ百草 主宰)
監修:高橋綾子(名古屋造形大学 教授)
アドバイザー:森北伸(愛知県立芸術大学 教授)
実行委員長:水野雅文(図濃代表)
主催:土から生える実行委員会
(一社)セラミックバレー協議会
Instagram:@from_soil_2024
WEBサイト:https://art-in-mino.jp/
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