【岐阜】吉田旗店/さかだち社会見学

岐阜市、忠節橋の南にある明治時代から続く創業140年の老舗の旗屋「吉田旗店」さん。

大相撲ののぼりや神社ののぼり旗、法被など、今でも手染めの職人技を受け継いでひとつひとつ丁寧に作られています。

今回はさかだちブックスを運営するリトルクリエイティブセンターがいっしょにお仕事をさせていただいている、美濃の「紙ing(シイング)」さんのご紹介で、吉田旗店さんの工房を見学させていただきました!

工房のすぐ目の前は長良川が流れており、堤防と青空のコントラストがとても気持ちよい場所。染物にはきれいな水が必要なので、旗屋さんは川の近くにあることが多いそうです。

 

まず始めにご案内していただいたのは、のぼり旗に下絵を書く作業をしている現場。

旗の制作は下絵を描く職人さん、縫製をする職人さん、染め職人さんが分担しておこなっています。

ここではまだ真っ白な旗の下に原画を敷き、透かすようなかたちで下絵を写す作業が行われていました。手元を囲うように立ててあるボール紙は光の反射を防いで下絵を見やすくするためのもの。洗い流せる桃色の染料を使って一画一画筆を細かく動かしながら描いていきます。

 

 

吉田旗店さんでは、手染めの他に、シルクスクリーンでの旗の制作もされています。

こちらがシルクスクリーンの作業台。さすが旗用だけあってとても大きいです!

ここに旗をセットして染料を引いて一気に染め上げます。シルクスクリーンで染めることによって柄の際がはっきりと印刷されるのだそうです。

 

場所を1階に移動して見学させていただいたのは、「美濃筒引き本染め」という技法を用いた染めの現場。

真剣な表情で下絵をなぞるように「糊置き」をしているのは6代目社長の吉田さん。

まっすぐに糊が引かれていく様子は見ているだけで気持ちがよいほど美しい職人技です。

簡単そうにスラスラと手を動かされていましたが、糊置きができるようになるには数年の修行が必要で、さらには長年職人をされていても糊の状態や環境によってその都度微調整をしていかなければなりません。

糊はもち米を主原料に全て天然素材からできているため、暑い日には腐らないよう、温度管理まで気を配る必要があります。想像以上に繊細な作業でした。

 

作業をする際にのぼり旗の両側を特殊な道具で固定しますが、この道具を作る職人さんがもういなくなってしまい、大変貴重で高価なものだそうです。

 

糊置きの次は、いよいよ染めの作業。

「しんし」と呼ばれる竹材でピンと張られた布の上をすいすいとハケを滑らせるように一色ずつ染め上げます。

真っ白の綿は美しい藍色に。

 

染料はこれまでに染められてきた膨大な種類の色の記録をもとに、色を混ぜ合わせて毎回そのとき必要な色を作っていきます。

「この色とこの色を混ぜるとあの色になる」というような色のセンスも職人さんの大切な能力のひとつ。

代々大切に使われてきた色の染み込んだハケがかけられている壁はパレットのようできれいでした。

 

 

こうして染め上げられた旗は、色落ちしないように色止め剤を塗られてから、大きな洗い場で糊を洗い落とされます。

これを乾かしてから、縫製にかけてのぼり旗の完成! 縫製まで全ての工程がこの場所で行われています。

完成した旗は歌舞伎の幕や相撲のぼりとして会場を盛りたてます。

 

旗の他にも、手ぬぐいや法被など代々受け継がれた技法で様々な染物を手がけている吉田旗店さん。

普段は工房の見学会はされていませんが、運がよければ染めたてののぼり旗が青空にたなびく景色を見られるかもしれません。(午前中に干されることが多いそうです。)

歌舞伎や相撲を見に行った際にはぜひのぼり旗にも注目してみてください!

 


吉田旗店

住所:岐阜市青柳町6-5

2017年11月22日作成
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