【岐阜】美味しいおそばの食べ方/おとなの学校

毎月最終水曜日に岐阜市カンダマチノートの2階で開校する「おとなの学校」。

様々な分野で活躍されている方が一夜限りの先生となり、ご自身の活動や考えについて授業を開きます。

さかだちブックスもここ最近はほとんど毎月出席させていただいていて、毎回どんな先生がいらっしゃるのか楽しみにしています。

さて、今回の授業は「おとなの食育」。先生は岐阜市大洞の願成寺の門前にお店を構える「お蕎麦と会席 せいがん」2代目の金子英司さんです。

勉強するのは“蕎麦前”の作法。「蕎麦前なくして蕎麦屋なし」と言われるように、蕎麦前とは蕎麦の前に日本酒と肴を楽しむおとなのお蕎麦の楽しみ方です。

 

いつもは生徒としてここ1年ほど、ほぼ皆勤賞の金子さん。普段はとても穏やな表情を浮かべている金子さんですが、この日は作務衣を身に纏い、きりりとした料理人の顔で登場されました。

いつもはカフェのカウンターが、この日限り蕎麦屋の厨房に変わります。

“給食”ということで、席順をあみだくじで決め、みんなで机を囲み、一人ずつ自己紹介をして早速実食!

 

授業が始まる前からよい香りを漂わせていたのは一品めのぶり大根。

それにしてもこんなに深く味の染み込んだ、ほろほろのぶり大根は初めて食べました!

お酒の肴にぴったりで、みなさん早速日本酒が進みます。

 

続いて、岐阜の老舗麩兵さんのさしみゆば、胡麻豆腐、板わさ(かまぼこ)の3点盛り。

特に板わさは、蕎麦前では定番の肴。

「かまぼこは板に付いていて、それをわさび醤油でいただくので“板わさ”と言うんです。」と金子さん。

お蕎麦屋さんで「板わさ」を注文できたら粋なおとなですね!

 

お酒はセルフということでそれぞれのペースでお料理と合わせて楽しみます。

この辺りからは、授業ではなく贅沢な居酒屋さんに来ているかのような気分(笑)。

せいがんさんのお店のすぐそばにある天然記念物「中将姫誓願桜」の名前が付いた純米酒や、「柳ヶ瀬」など岐阜の地酒を中心に楽しみます。

 

厨房からいい香りがするなあと思ったら、焼き鳥が続きます。

お肉のやわらかさは残しつつ、表面はしっかりと焦げ目がついていて香ばしい絶妙な火加減で絶品!

味付けの秘密はお蕎麦の出汁を使っていること。

サラダには短く切れてしまった蕎麦を揚げたものがアクセントとして入っていたり、お蕎麦を余すところなく味わうことができました。

 

なんだかもうすでに心もお腹も満たされてきて、ほろ酔い気分の方もちらほら。

忘れてはいけないのがこれは授業だということ! 蕎麦屋としての金子さんの自己紹介と、お蕎麦についてお話が始まりました。

岐阜市に生まれた金子さんのご実家は、今から20年以上前の1995年にせいがんを創業しました。昔からお蕎麦は好きだったけれど、実は蕎麦屋になろうとは考えていなかったという金子さん。大学受験がうまくいかなかったことをきっかけに蕎麦屋の道へと進みます。

金子さんのなかで今でも大切な存在なのが、20代の頃2年間修行をされていたという東京の「神田まつや」さん。日本一忙しい蕎麦屋として有名です。

明治時代から続く老舗の蕎麦屋で朝から晩まで休みなく修行を重ねたのち、ご実家であるせいがんさんの後継ぎとして岐阜に戻ってこられました。

 

「自分から人に会いに行く」ということを大切にされている金子さんは、最近では厨房に立つだけでなく、「蕎麦においでよ!」という蕎麦屋を営む人や蕎麦好きをつなぐイベントを東京で開催されています。

東京に出張に行くことがあっても蕎麦屋を巡れるのはせいぜい数件。一度にたくさんの人に会うことができないのを残念に思い、イベントを主催することにされたそうです。イベントで出会った人がわざわざ岐阜まで足を運んでくださることもあるそうです。

 

せいがんさんには産地の食べ比べというメニューがありますが、蕎麦とひとことにいってもその産地は全国に100カ所以上もあります。

それぞれ個性を持っているので、お店によってはそば粉をブレンドしてバランスを取っているところもあるんだとか。

蕎麦には様々な栄養分が含まれていますが、麺状にして茹でると栄養分がお湯に溶け出してしまうのだそうです。

蕎麦に含まれている栄養分を余すところなく摂取することができる食べ方が「そばがき」です。

 

この日は3種類のそば粉のそばがきを食べ比べさせていただきました!

そばがきはそば粉を熱湯でこねてお餅のようにしたもの。茹でる工程を踏まないため、栄養分をそのまま摂取することができるのです。

こうしてみると蕎麦の実がきれいな淡いグリーンをしていることに気がつきます。

もっちりとしていて、麺にしてつるつるっとすする蕎麦と同じものだとは思えないほど!

でもしっかりと蕎麦の香りがしていて、醤油や塩、わさびをつけても、そのままでもおいしくいただけます。

 

昔、お米が育たないような痩せた土地では、そばがきにあんこやきな粉をつけておやつとして食べたりもしていたそうです。

水分をたっぷりと含んでいる分、かなりお腹にたまります。

そば粉の違いや挽き方の違いで香りや舌触りを比べて楽しむことができました。

一見同じように見えても、土っぽい香りがしたり、緑の香りがしたり、それぞれ個性があるのがとてもおもしろいところです。

 

ちなみにこちらが蕎麦の実を茹でたもの。品種にもよるそうですが、大きさは米粒の2〜3倍はあります。

「これがお蕎麦になるのか〜!」と生徒のみなさんも興味津々!

そばがきに見られたような淡いグリーンは外側の殻の色で、中は白色をしています。

最後にいただいたのは、これを茹でて作る蕎麦の実粥です。

 

鯛から取った出汁がほのかに香り、茹でることによって殻が剝けて白くなった蕎麦の実のお粥は見るからに優しいです。

鯛の出汁の茶碗蒸しがおいしかったため、それをお粥にアレンジして生まれたメニューだそうです。

 

金子さんの解説つきの蕎麦のフルコースによって、蕎麦の世界がぐっと広がった授業でした。普段わたしたちが食べているお蕎麦は“締め”なのですね。

金子さんの話ぶりや厨房に立つ姿からは、お蕎麦に向き合う真摯な姿勢が伝わってきて、これはもう、お店に行くしかない……!

授業に参加できなかった方も、ぜひせいがんさんに足をお運びください!

 


おとなの学校

と き:毎月最後の水曜日 19:00〜21:00

場 所:カンダマチノート2F

授業料:800円(1ドリンク)

定 員:約20名

Facebookページ:https://www.facebook.com/imanarakikeru/?ref=ts&fref=ts

 

 

お蕎麦と会席 せいがん

住所:岐阜県岐阜市大洞1丁目21−11

営業時間:11時〜14時30分/17時30分〜19時 (昼完売の際は、そのまま終わることも有り)

定休日:水曜、月・火曜の夜席

電話番号:058-242-0053

2017年09月30日作成
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